マイス・パレードの7枚目のアルバムにあたる最新作は、同じラインナップと楽器編成で作られた作品、と言う意味で「3部作」的なゆるやかな括りを感じさせるものの、前2作のスペイン語タイトル(「Obrigado Saudade」「Bem Vinda Vontade」)ではなく、バンド名を冠した作品になった。とはいえ、おなじみマイ・ブラッディ・ヴァレンタインを思わせる、あのファズがかったシューゲイザー・ギターの合間を縫って激しく掻き鳴らされるアコースティック・ギターやヴァイブ、手拍子などに、スペイン風な雰囲気は残っている。また、ポスト・ロック界の頼りになる男:ダグ・シャーリン(HiM他)の安定感のある逞しいドラミングも、ムームのクリスティン・アンナ・ヴァルティースドッティアーも、そしてもちろん大黒柱にして中心人物:アダム・ピアースももちろん健在。彼の力強く、しかしどこか物悲しく、心をなだめるような歌声は、ビル・キャラハンの域に達しつつあると言えるだろう。
アダム・ピアースの書く曲のスタイルを定義するのは難しい――パワフルなリズムをメインに構成されていて、しかしポップな感覚も充分備えている。と同時に、容易なカテゴライズをすり抜けていくような巧妙なところもある。たとえば、クリスティンの凍えた霜のように嗄れたウィスパリング・ヴォイスと、アダムの暖流を思わせるウォームな声のトーンが美しくぶつかり合う「Double Dolphins On The Nickel」は、自然の持つ神秘的な美と交感しているように聞こえる。しかし一方で、たとえば洗面台いっぱいの石鹸の泡のように日常的な事柄の中にも、彼らは美しい神秘を見出すことができるんだろうな、とも感じる。
本質的に、アダム・ピアースという人は大人の男の身体の中に閉じ込められた、純真な少年なのだろうと思う。音楽からエモーションだけを切り離すことは、もちろん不可能な話。だが、まがい物の「エモーショナルなロック」がはびこるこの世界で、こんな風に本物の感情を掻き立ててくれる音楽に出会えるのは、やはり喜びに他ならない。
マイス・パレードは、これまでに悪いアルバムを作ったことがないバンドだ。本作「マイス・パレード」もまた、その例に漏れない。一説には、このアルバムはアダム・ピアースが新たに作った〝ガレージ〟スタジオを試験をするという目的のために作られた・・・という話もある。だとしたら、この作品はそんなやや軽めなスタンスで作品に取り組んだとしても、これだけ魅力的な作品を生み出すことができる彼の才能を改めて証明したものと言えるんじゃないだろうか。マイス・パレードは、現在活動中のバンドの中でも最も重要なバンドのひとつだと思う。にも関らず、彼らがいまだに知る人ぞ知る存在だというこの現状を、今回こそ変えようじゃないか。
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