教訓。必要以上の期待は決して持たぬこと。
エレクトロ・バレリアック系ユニット、シーヴェリー・コーポレーション(以下TC)の片割れであるロブ・ガルザによる新プロジェクト、Dust Galaxyのファースト・アルバム。先行EPの「Come Here The Trumpets」のB面リミックスをたまたま聴いて気に入り、店頭で見かけるや「サイケなインド音楽とロックのクロスオーヴァー」という店員のイチ押しコメントとインド色コテコテなジャケットに乗せられ、試聴もそこそこに購入。買った時は「外れる訳がない」ぐらいのぼせ上がった。が、結果は・・・「また、やっっちゃったよ!」(涙)。大後悔の一枚とあいなった。
誰が見てもインド系と分かる単刀直入な濃いジャケット。開けばその中面も、CDの盤面も美しい畝りを描き、グルグル・サイケ好きなマイ・ハートを直撃。嬉しさに躍る心を抑えきれず、店を出て車に乗り込み一番でカーステに放り込んだ。1曲目「Sun In Your Head」でパワー不足な腰砕け感をうっすら感じるものの、サイケなインド臭さが漂っており、これは及第。お次はと、2曲目の「Limitless」に入った瞬間、期待は一挙奈落の底へ・・・CDの取り出しボタンに手を掛けつつ唸った。「ラーガ・ロックか、これは!?」・・・・それは、後方で響くマーティン・ダフィ(元フェルト、プライマル・スクリーム)のオルガンが耳に届かなくなるくらいのショックだった。だが、たった2曲で答えを決め付けてしまうのは早いと思い直し、次の「Mother of Illusion」へ。冒頭の小気味良いギター・リフとアフリカンなビート、ロブ・ガルザのヴォーカル・・・ダサい。恐ろしくダサい。90年代のマンチェスターで使い古し切った構成と足重なプロダクションは、LCDサウンド・システム辺りに通ずるところがあるのかもしれないが、あれを新鮮に感じるには自分は年を取り過ぎている。
もうこれ以上聴いても仕方ないかもしれない、と思った。けれども、自分の支払った対価は出来れば回収したい。これまでだって繰り返し聴く内に気に入ったアルバムもあったじゃないかと再度自分を奮い立たせ、アダム・ブレイク(コーナーショップ)がシタールで参加している「It‘s All Yours」に一縷の期待を寄せる。が、それも出だしで木っ端微塵に崩壊だ。確かにシタールが鳴っている。鳴っているが、それだけ。ロブ・ガルザの声の添え物のように、紅しょうがのように端にちょこんと載っているだけ。
過剰な期待は禁物というフレーズも知っている。派手な看板と宣伝文句に惑わされるのは、惑わされる方が悪いことも分かっている。だが、このスパイスの効いていないカレーのような音を何と呼ぶ!?これがクロスオーヴァーか?冷えたレトルトのカレーうどんを食べたような(食べたことはないけど)、得体の知れない気持ち悪さが舌先から胸元までを駆け巡る・・・また無駄金を使ってしまった、悔しい!
後悔してハタと気付く。TCのアルバム「The Cosmic Game」をフレーミング・リップスが参加しているからと聴いた時も、こうした物足りなさと違和感を覚えたな、と。ロブ・ガルザは、TCの頃よりワールド・ミュージックのエッセンスを貪欲に取り入れることで、新たな形態をクリエイトしようとしてきた。いわゆるクロスオーヴァーな作風が彼の信条だし、TCの場合、あのヌルさもあれはあれで良かったと思う。人を鼓舞煽動し踊りまくり上げるタイプの音楽ではなく、どちらかと言うとラウンジなくつろぎを目指していたと思うから。
だが、このダスト・ギャラクシーはどうなんだろう。ここで彼が提示した形態は、モッズとインドを掛け合わせ、量産プロダクション・ラインで製造した凡百のクロスオーヴァーだ。既存の音楽を解体することもなく再構築することもなく単純に掛け合わせただけの緩さ、軟さ。それに非常に魅力の乏しいロブ・ガルザ氏の声が大仰にダブされる。私はそこに何の新規性も、革新性も見出せないし、彼の目指したロックは私の求めるロックではないようだ。
先に挙げた2人のゲスト以外にショーン・リーやブレンダン・リンチ等、百戦錬磨の布陣で臨んだにも関わらず、プロダクションと曲の完成度と言う、経験によって磨かれる要素ぐらいしか褒めどころが思いつかない。歌詞に関しても、ツタンカーメンや寺を比喩にする愛の歌がガルザ的男のロマンチシズムなのだろうが、自分の心には全く響かないし、このアートワークで宗教や歴史に関連する単語を並べた歌詞をぶつ辺りも、捻りがなさ過ぎて聴いていて恥ずかしくなってしまう。その親父センスに、カレーどころか加齢臭を感じるのだ。
全く以って、私の手元に来てしまったのが不幸としか言いようのないこの作品。シタールが使われていると言うだけでアナンダ・シャンカールを引き合いに出し、インド=サイケと公式化する無頓着な店側のヤリ口が疎ましいが、そのあからさまな手法にまんまと乗せられてしまう、頓馬な自分が何と言っても一番情けない。これだけ貶して今更だが、作った人に罪はない。JAROだって売った人を責めたりはしないだろう。いくつになっても同じ間違いを犯してしまう、俺が一番悪いのさ~♪と、一瞬反省。そんなこんなで良い教訓になったDust Galaxyは、速攻で中古屋行きに決定となった。南無~。
ダスト・ギャラクシー公式サイト
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