54-71のニュー・アルバム『I’m Not Fine,Thank You.And You?』は、シカゴのエレクトリカル・オーディオ・スタジオでスティーヴ・アルビニが録音、ボブ・ウェストンによってマスタリングを施された。「間」 から生み出され54-71ならではの「音像」が、シェラックの師弟コンビによって見事に捕えられ記録されたことが、作品を聴けばすぐに分かるだろう。 それにしても本作は、オリジナル・アルバムとしては実に4年ぶりの作品となる。この間ここまでバンドが歩んできた道は、決して順調とは言い難いものであった。
2002年に発表したメジャー・デビュー作『enClorox』と、翌年の『true men of non-doing』もウェストンのもとで制作され、高い評価を得たが、結果的BMGからのリリースはこの2枚で終了。バンドは再レコーディングによるベスト・アルバム『ALL SONGS COMPOSED&PERFORMED BT 54-71』を作るものの、その直後にはギタリストのスカムグラインダーこと高田憲明が脱退してしまう。すぐ代わりのギタリストを捜すようなことをせず、ヴォーカルのビンゴこと佐藤慎吾がキーボードにスイッチし、しばらくインストゥルメンタル・バンドとして活動を継続するなど、様々な思考錯誤を積み重ねたこの時期の54-71のライヴ・パフォーマンスは、それなりに刺激的な要素も感じられなくはなかったが、やはりどこか決定的な方向性を定め切れていないという印象を拭えなかった。
しかし2007年、ついに新しいギタリストが加入し、54-71は元の編成に戻る。新たに加入した高田拓哉は、苗字こそ同じだが、ギターのスタイルは全くと言っていいほど違う。前任者が主に乾いたタッチの音でプレイしていたのに対し、この新メンバーはもっと湿り気を含んだヘヴィなトーンのサウンドを鳴らす。それに合わせてか、ビンゴのヴォーカルも声を潰して叫び、唸り上げるような、アグレッシヴなスタイルへと変化した。おそらくは、過去に作り上げた形に捕われないアプローチのできる人材が必要だったということなのだろう。創作パートナーとして相応しい者に巡り会うまで根気づよく機会を待ち続けた彼らの、表現に対する誠実さには心から頭が下がる。4年の月日は決してムダではなかった。
一方で、ボボこと堀川裕之が最小限のドラムキットから叩き出すドラミングと、リーダーの川口賢太郎が弾く他のどこにもない奇妙なグルーヴを持ったベースという、54-71の根幹を成す部分は不変だ。ここさえ変わらなければ54-71は不滅だと改めて実感するのと同時に、やはりこれだけ強力なリズム隊には、それに相応しいユニークな上物が必要だったのだと思う。
本作には、まるでリベンジのように、既発のナンバーをリメイクした〝idiot(awake of Noex)〟と〝ceiling(detuned)〟が収録されている。リズムの基本要素を流用しながらも完全に新たな命を吹き込まれ、生まれ変わったこの2曲を聴けば、54-71が見事な再生を果たしてみせたことがハッキリと分かるはずだ。今後のいっそう精力的な活動に期待します。
BY 鈴木喜之
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