フランツ・フェルディナンド、アークティック・モンキーズと人気バンドを立て続けに世に送り出しUKインディ界を代表する人気レーベルとなったドミノからドカスカ08年春の新作が出ましたよー★というわけで、対談形式のスペシャル・バンパー・レヴューをシリーズでお届けしていきます。
■ラウンド1■
Sons And Daughters
「This Gift」
口上(※オフィシャル・バイオより):サンズ&ドーターズは06年夏からこの作品に取り組み始めた。テレビも電話もない隔離されたスコットランド西岸の納屋を改造した家に閉じこもった彼らは、1日8時間「自分達のブロンディーやザ・スミス好きでもある側面を反映させるべく」グレートなポップ・ソング作りに取り組んでいった。レーベルがプロデューサーとして提案したのはバーナード・バトラーで、スウェードのファンだったというバンド側はこのアイデアに即反応。とはいえ02年以来リー・ヘイゼルウッドやレナード・コーエンのメランコリーとガレージ・ブルースの混合でフランツ・フェルディナンド、ニック・ケイヴといったシンパを獲得してきたS&Dはバーナード・バトラー本人にとっては未知のバンドであり、両者の呼吸が合うまで時間がかかった。ゆえに緊張の高まる場面も少なくないスムーズとは言いがたいレコーディングだったが、ジョー・ミーク話をきっかけに歯車が合い始め、結果バーナードを触媒に(ジョニー・マー直伝の12弦ギターもこの作品で活躍)バンドはこれまで切り開いてこなかったサウンドを生むに至った・・・
オーディオバニー(以下AB)まずは1枚目(CDポン!)。
キャプテン(以下C)・・・これ誰?
AB―グラスゴー発の男女4人組ガレージ・ロッカーズ、サンズ・アンド・ドーターズの新作です。プロデューサーの方がもしかしたらバンドより有名かも??
C―だれ誰?他にどんな作品を手掛けた人?
AB―リバティーンズとか・・・。
C―え、ミック・ジョーンズ?!
AB―いんにゃ。答はバーナード・バトラー。最近ではラフトレがマネージメントを担当する歌姫ダフィーのデビュー作参加&ヒットで英プレスから「00年代のジェリー・ウェクスラー」と称され、ケイジャン・ダンス・パーティからブラック・キッズのデビュー作まで引っ張りだこ、UKインディ界から人望厚いプロデューサーのひとりと言えるでしょう。
C―ちっ!あの前髪男か。しかしこのバンド、メンバーの女の子のルックスは俺の好み なのに音楽そのものに魅力が薄いなあ。
AB―何せメイクのスポンサーはMACだしね。羨ましいなー。
C―マックだかなんだか俺にはどうでもいいが、よくプロデュースされた作品なのは認める。
AB―音の作りがなにげに50年代風、粒の立ったサウンドの中にもギターのトゥワングやエコー、エフェクト使いなどレトロ・モダンなスパイスが随所に効いてますね。
C―グルーヴもドライヴ感があるし、歯切れのいいタフ&タイトな音にまとめてあってプロダクションンの質は高い・・・・・・でもなんか物足りないのはなんでなんだ?
AB―早くも手厳しい意見っすね。
C―いやでも、アルバム前半なんて「Love The Cup」とか「The Repulsion Box」と大して変わらない印象だよ。04年頃かな、ファイナリー・ファーナセズの前座で観た時はいいバンドだと思ったんだけど。
AB―アーチー・ブロンソン・アウトフィットの前座で観たけど、頭数曲のインパクトが最後まで持続しないバンドと感じたのは覚えてる。「カントリー&ウェスタン・ガレージ」っていう方向性そのものは個人的に好きだから、もったいないと思ってしまう。
C―プロデューサーの手腕で音は引き締まったけど、バンドそのものは4、5年前から実はあんまり進歩してないって印象だな。でも、スコットランドのバンドはこういう音楽やらせると上手いよね。
AB―そうなの?どういう音楽のこと?たとえば誰?
C―テキサス。
AB―(爆笑)。
C―いやいや、別に悪い意味で言ってるんじゃないよ。要するに「酒を飲みながらガンガン盛り上がれるグッドタイム・ミュージック」ってこと。そのノリはちゃんとある作品でしょ?
AB―なるほど。確かに、盛り上がってるパーティの最中にこのアルバムを爆音で鳴らしたら、みんなひゃっほー!と踊り始めそう。でもテキサスのたとえはあんまりだ。S&Dはあそこまで田舎っぽくないし、単なるグラスゴー・カウボーイズ/ガールズとは違うんじゃないかと・・・しかしリフがイケそうでイケないのが惜しい!デュアン・エディっぽい③のギターに「おおっ?」と思わされてもコーラスが入るとしょぼくなるし、定番の♪ナー・ナ・ナ・ナ・ナ~・・・コーラスから威勢良く始まる④も「ここぞ」ってとこでパンチが弱い。せっかく色んなギター・サウンド使ってるんだから、もっとガツンといってくれていいのに。⑤はたぶんブロンディーのつもりが半端に80年代ポップぽくてB-52S、いや下手したらゴーゴーズ?
C―⑦は「Mother‘s Little Helper」のリフにモータウンのグルーヴを掛け合わせましたって感じ?⑩はやっぱり俺にはテキサスに聞こえるし・・・あ、⑫はパンキーでいいな。バズコックスっぽい切迫した勢いがあってストレートで一番好き。
AB―このバンドはヴォーカルのアデルちゃんが看板らしいけど、彼女の声に個性やキャラクターを感じられないのがきつくなってくる。
C―女性ヴォーカル全般に対して基本的に偏見を抱いてる歪んだ人間にそこまでクソミソ言われたくはないだろう、向こうも。
AB―基本的にキャンキャン気味の声だけに表現に深みや幅がないんだろうな。だから音楽の持つドラマやパッションを演じようとせず、気負わず素直に「歌ってる」風情の⑨が私には一番聴きやすいのかも?コーラスもフリートウッド・マックっぽくて、無理にやってる感じがないしね。でもまあ、彼女の勝気なロック娘風声に対してしのぎを削るはずのカウンター的存在なはずの男性ヴォーカル、これが基本的に存在感薄いのも男女掛け合いのパワーを殺いでいると思う。
C―この対談みたいに?
AB―その通り。いやしかし、ソングライティングだけとればロング・ブロンズの方がよっぽどキャッチーに・・・まあワンパターン気味ではあるけど、器用にポップに書けてるし、ブルース~ガレージ系の音楽性ってことならデューク・スピリットやハウリング・ベルズの暗さの方が自分の好みです。たぶんこの人達、すごく生真面目に音楽をやっているんだと思う。シリアスなのは悪いことじゃないけど、セクシーさとユーモア、このふたつがSASSYなフィメール・ポップの要素と思う自分としてはもうちょっとユーモアをプリーズ。にしても以前はもっとヘンな個性やエッジがあったのに、⑥なんて普通にラジオでかかりそうなロック・チューンだね。音楽ライターの一部が「この作品でS&Dはメインストリームに浮上するだろう」と評しているのはこのことなのかな?でもバンドが本当にやりたいことがそれなのか、腹が括れているのか、聴いているうちに分からなくなってくる。
C―とにかく音楽的にも楽曲のスタイルにしても幅が狭くて繰り返しのリスニングに耐えない、そこが気になる作品だね。
AB―もともとコンセプトやセンスが先行しているアート系のバンドなんだろうし、それはある程度仕方ないのでは?
C―それにしたって一面的すぎだよ。最初から最後までノリのいいアップ・テンポ/タフ目の曲ばっかりで押せ押せ、スローな聴かせ曲がほとんどないのも単調さの要因。もっと曲作りの技を増やしてほしい。
AB―ひたすらヴァニラ味、ヴァニラは美味しいけどどこまでもヴァニラ味だと飽きてくるアイスクリームってこと?
C―うん。それとなんかこう、友人サークル内で終始しちゃうバンドって印象を抱くのは気のせいかなぁ?ライヴに来るのはヒップな友達と知り合いのヒップなバンド仲間ばっかり、みたいな。デビューした頃の出だしは期待が持てた連中だけど、申し訳ない、この作品そのものの賞味期限は短いと俺は思う。
AB―この人達が目指しているのはもしかしてX・・・・・・?
C―冗談じゃねーよ!(怒)
AB―まあ、だとしたらジョン・ドーに鍛えてもらうか、オークリー・ホールの泥くさいガッツを見習ってほしいもんですね。
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