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It Hugs Back

It Hugs Back

Sweet noise into your heart

「ケントが生んだブライト・アイズ」・・・なんていささか安直すぎる形容をNMEにたてまつられたこともある4人組イット・ハグス・バック(マシュー、ディミトリ、ジャック、ポール)。ヴォーカル=マシューのフェルトのようにソフトでセンシティヴな歌声とリリカルなメロディゆえにそんな評判が生まれたのかもしれないが、アコースティックとエレクトロニックな浮遊感の絶妙なブレンド~シンプルなメロディの反復と緻密なリズムで情感をひたひた高めていくスロー・バーンな曲作りに耳を浸していると、むしろヨ・ラ・テンゴとステレオラブ、あるいはフィーリーズとベル・アンド・セバスチャンの幸福な出会い?なんて形容が頭に浮かんでくる。彼らのレパートリーに「Early Evening」という美しい曲があるけれど、そのふくよかなサウンドと淀みないソングライティングはまさに夏の黄昏や夕涼みが似合いそう。ネオ・ブリットポップやディスコ・パンクなど二番煎じまみれ/オリジナリティのかけらもない同世代UKバンド勢のいきり立った線香花火とは異なる確かなセンスと大味な英バラード・ロック組に欠けているピュアネスとで、このバンドは今後自ずと輝きを放っていくことと思う。
06年以降自主レコーディング音源をTigertrapSafe and Soundから7インチとしてリリース、ライヴ・シーンを積極的に回りながら昨年Too Pureと契約。最後にバンドに加わったジャックのキーボードがばっちり効いたスペイシーなノイズ・ポップで新たな一面を見せてくれた最新シングル「Other Cars Go」をフィーチャーしたミニ・アルバム「the record room:first four singles」(既発シングル4枚を収録)をリリースしたばかりの長髪(カート・コバーンもしくはイヴァン・ダンドゥを思わせます)&左利きのマシューと「昨日刈ったばかりなんだ」と照れくさそうだった短髪のジャック(ドラムスのディミトリがカットしたそう)から成る長短コンビがインタヴューに応じてくれましたが、こちらの予想通り作る音そのまーんまのほんわか無邪気で音楽好きな好青年達でした。ちなみにこの取材の翌日、ずいぶん以前に通販で注文してあったIHBの7インチ4枚組セットが届いたんだけど、「遅くなってごめんね」(→シングルのプレス作業が遅くなったそう)とメンバー手書きのお詫びポスト・イットが添えてあったのも泣けた。そんなナイスな彼ら、応援してあげてくださいね!

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――これまでは限定シングルのリリースに留まってましたが、いよいよシングルをまとめたコンピEPがCDで出ることになって嬉しく思ってます。
マシュー(Vo/G、以下M)「そうだね。それこそ今日店頭に並ぶ予定なんだけど、ワールド・ワイドでのリリースとしてはこれが最初ってことかな。でもこのコンピレーションが僕達のファースト・アルバムって風には受け取ってもらいたくないし、あんまり大袈裟になってほしくないってところかな。どちらかと言えば、コンピに入ってる新曲2曲に注目してもらえたらいいなと思ってるよ」
――「The Record Room」というサブ・タイトルがついてますが、これはあなた達のホーム・スタジオのこと?
M「そう、あそこでレコーディングもするし、なんでもあそこでやってる」
ジャック(Keys/G、以下J)「うんうん」
――自分達でレコーディングすることにしたのは、エンジニアなりスタジオ技術を持ってるスタッフを見つけることができなかった、という実際上の理由から?
M「いや、(自分達でやるのが)ベストだと思ったから。自分で音をいじるのが好きなんだ(笑)。でも、この間フランスに行った時初めてスタジオに入ったんだけどね。あれは最高だったなー」
――じゃあバンドの始まりは、たとえば誰かの家の物置部屋に8トラックなり機材を置いて演奏をレコーディングしていく・・・という感じ?
M「そうだね。まあ、Too Pureと契約してからは新しい機材もかなり増えたけど」
J「ははは!」
M「でもいい感じだよ・・・時間をたっぷりかけられるし、それは僕達バンドとしても求めていることだしね。コンピュータや機材も自分らでちゃんと使いこなせるから、そうやって自分達のアイデアを自分達の手でちゃんと形にして発表していくことができるのは楽しいよ」
――メンバーが集まったきっかけは?
M「僕達はみんな友人同士なんだ・・・もともとセカンダリー・スクール(※イギリスの中等学校)に通ってた頃知り合ったんだよね。だからかれこれ・・・22歳だから、11年?いや10年くらいか、それくらいの付き合いになるんだよ。だから――まあ、もちろんガキの頃は今とは違ったけどね。週末に集まってプレイしたり・・・学校の昼休みを利用してプレイしたり」
J「よくプレイしてたよねー、昼休みに(笑)」
――現在のラインナップになってIHBとして活動に取り組むようになったのは今から2年ほど前だとか?
M「いや、この4人組になったのは去年の夏。それまではまだ大学に通っていたから」
J「その前まで、僕は北部で暮らしていたんだ。リーズの大学で勉強していて・・・」
――そうだったんだ。
M「うん。彼(ジャック)は他のバンドでも活動していて、時間が見つかったら一緒にツアーしたりしていたんだ。でも、今の顔ぶれになって最初のギグをやる前からIHBはギター/ベース/ドラムのスリー・ピースとしてもかなりライヴをやっていてね。06年の1月頃には始まっていたかな?で、去年の後半あたりからこの4人の顔ぶれでライヴを続けてるっていう」
――じゃあしばらくはギグにポイントを置いてきた?
M「そうだね、とにかくライヴを本数多くこなすのが大事だと思っていて。というのも、何回かまとまった時期にライヴをやるたび、その終わりの方で尻上がりに調子が良くなってくるから・・・」
――ははは!
M「・・・だからライヴをなるべく続けて、願わくはそのまま調子を上げていきたいっていう(笑)」
J「それにライヴをやる方がずっと楽しいよね。一緒に過ごす時間も多いし」
M「そうだね。少し前に移動用のヴァンをゲットしたばっかりで、運転も自分達でやってるんだよ。4人だけだし、それがすごく楽しいんだ」
――IHBのユニークな点のひとつは、あまりイギリスっぽくないというか、たとえばヨ・ラ・テンゴなどアメリカのバンドからの影響をサウンドに感じるところなんですが、どんな音楽を好んで聴いてきました?
M「たぶんその指摘は当たってるよ。僕は・・・(軽く照れ笑い)ニルヴァーナとかを聴いて大きくなったし」
J「それにソニック・ユースね」
――空間のある音を作ってますよね。
M「うんうん、そこが自分達でレコーディングするのが好きな理由、結局自分達でやることになる理由なんじゃないかな。ああやって音を何層も重ねていくのって、じっくり時間をかけないとできないし。ほんと、やたら時間がかかるんだよ」
J「何度もやり直したり・・・(笑)」
M「(苦笑)そうそう!自分達で納得がいく音になるまでしつこく何度も繰り返すっていう。でも、それが普通にスタジオに行ってレコーディングすることになるとかかる予算も時間も決まっているし、バンドのメンバーじゃなく他の誰かが〝REC〟ボタンを押してくれるだけっていう・・・まあ、自分達に適したプロデューサーとスタジオを見つけることさえできればいいんだろうね。そのやりやすさ、快適さがプラスに働いてもっと音を重ねるべく集中できるだろうし、そこが重要な点だから。そうやって深みのある、繊細な音を作ることができるようになったらいいな・・・まあ、それが今後の理想ってことで(笑)」
――音楽をアカデミックに勉強したメンバーはいます?ライヴを観た時ディミトリのジャズ風なドラムに感心させられたんですが、それもイギリスの若手バンドっぽくないですよね?
M「まあ・・・・・・実際僕達みんなジャズは好きだし(苦笑)!」
J「それに、全員同じ音楽の授業を受けてたってのもあるんじゃない?」
M「うんうん、すごくいい先生に教わったんだよね」
J「だからジャズなんかも以前プレイしたことはあったよ」
――一般的なポップ・ミュージックだけではなくもっと広範な音楽趣味のバンドなんですね。
J「んー、でも自分達でプレイするっていう意味では――」
M「だから、聴く音楽に関しては幅が広いんだ。ジャズから、それこそ・・・ノイジーなフリー・ジャズまで、色んなものに影響されてるし。ああいうカオティックなサウンドだよね。でも、もちろんそういう要素も作品の中にあってほしいけれど、基本はあくまで歌ベースのバンドでありたいんだ」
――あなた達の歌は今のイギリスのラジオでよく耳にするような即効型ではないし、繊細で控え目ながら凝っていて、繰り返し聴くほど味が出てくるものですよね。
M「ありがとう」
J「(笑顔)」
――若いバンドにしては珍しく自分達の音を持ってるバンドだと思ったんですけど、このサウンドやアレンジはバンドの初めの頃から存在したもの?それとも初期はもっと違うタイプの音だった?
M「んー・・・それに関して僕個人の意見を言わせてもらうと、自分の好きなレコードがどれもそういうものなんだよね・・・深みがたっぷりあって、いくつも層が感じられて、それゆえ何度でも聴き返したくなる音楽っていう。だからそれが、まあ意識的にではないにしろ、自分でも音楽を作る際に目指すポイントになったんじゃないかな。アレンジなんかに関してはずっと同じ考え方を持ってきたと思うし・・・だけどバンドとしては、作品を重ねて活動をこなすごとにどんどん良くなっている、その手ごたえはあるけどね」
J「うん、僕もそう思う。だけど最初から今の音だったとは思わないな。たとえばこのシングル集を聴いてもらえば分かると思うけど、みんなからよく言われるもん、『一番新しいシングルは以前とずいぶん違うね』って」
M「そうそう。でも、それが狙いのひとつでもあったんじゃない?自分達のやってきたことを繰り返しすぎないようにするっていう」
J「ああ」
M「っていうのも・・・どんなバンドでもだんだんそうなってくると思うんだよね。ライヴを観に行ったのに、どの曲もおんなじに聞こえるじゃん、みたいな」
J「そうそう(苦笑)」
M「だから、自分達としてはどれも似たり寄ったりの曲に聞こえる状況は避けられればいいなと」
――もっとも影響を受けたバンドやアーティストと言ったら?
M「プロダクションや音の重ね方という点で言えば、ジム・オルークの手掛けた作品はなんでも好きだなあ」
J「うんうん」
M「ウィルコ、ソニック・ユース、それにジム自身の作品・・・とにかくすごく音がいいし、本当に素晴らしいサウンドを作ると思う。もとはとてもシンプルな曲なのに、そこからもっと複雑なものへと変化していったり、最初から最後まで一本調子じゃないからとても面白いものになっていくんだろうね。それが僕が考える最大の影響かな?お前はどう?(とジャックに促す)」
J「あー・・・もう質問に答えられちゃった(苦笑)」
M「あはは!」
J「ふーむ(困り顔で考え込む)・・・・・・僕達ひとりひとり違う音楽を聴いてきたからね。でも、僕にとってはビートルズってことになるんだろうな」
M「あ、それはもちろん!当然」
J「避けようがないっていう(笑)」
M「避けたくもないだろ?」
J「うんうん!」
M「僕個人で言えば・・・たぶんニール・ヤング。やっぱそうなると思う。もちろん、古いバンドやアーティストのレコードばっかり聴いてるってわけでもないんだけど、ニール・ヤングの最新作は実際素晴らしかったからね。だから彼は今でも現役ってことで」
――話は変わりますが、あなた達の出身地ケントを形容するとしたらどうなります?
(両者、顔を見合わせる)
J「〝英国の庭園〟ってよく呼ばれるエリアだよ」
M「(苦笑)」
――正直「ケント出身のバンド」ってあまり思い浮かばないし、ロンドン、マンチェスター、リヴァプールのように高いバンド文化がある街ではない・・・ですよねたぶん?
M「それは間違いなくないね(苦笑)。以前もそういう質問をされたことがあったんだけど、ビリー・チャイルディッシュ、確か彼はケント出身だよ。でもそれを除くと・・・うん、たぶん彼くらいじゃない?(笑)」
――へえ。でもビリーくらいすごいアーティストが出てきたんならそれだけでも充分じゃないですか。
M「そうかもね。でも僕達にしてみたら・・・ロンドンにも近いエリアだし、ギグの多くはロンドンでやってきたんだ、特にバンドの初めの頃はそうだった。うん、だからあんまり土地としての〝ケント〟は影響していないんじゃないかな?どこにいたって僕達は同じ音楽を作っているんじゃないかと思うよ」
――でもロンドン外の地域から来たバンドの方がトレンドや「今のバンドはこうあるべき」みたいな姿勢から離れて好きなことをやってるような印象を受けます。
M「ああ、それは僕も感じる。でも、そういうバンドを(ロンドンで)目の当たりにするのはいいことなんじゃないかな?っていうのも僕達まだ若いバンドだし、色んなタイプのバンドとしょっちゅう対バンもしてる。そうやってトレンドを観察することもできるし」
J「同じ〝流派〟のバンドね」
M「そうそう。そういうバンドってみんなお互いの映し絵みたいに聞こえるよね・・・でもまあ、そういうことはあんまり深く考えるもんじゃないよ。自分達のやりたいと思ったことをやっていく、それだけなんじゃない?」
――このコンピをリリースしたらUKツアーに入る予定?夏フェスは?
M「フェスはBestivalに出演する予定。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインが出るんだ」
J「エイフェックス・ツインも!」
――出演を口実にフェスを観れるのはいいっすね。
M「だよね!タダでチケットが手に入るんだから悪くない(笑)。うん、エイフェックスのライヴは面白いだろうな。楽しみだ。DJじゃなく〝ライヴ〟って告知されてるし、いったいどうやってあの音を生で出すのかすごく興味あるし」
――夏が終わったらファースト・フル・アルバムのレコーディングに着手する?
M「っていうか、これから始めるつもり。だから今年の夏の間は、コンスタントにライヴをやらないつもりなんだよ。まだごくごくラフな見通しだけど、予定通りに進んだら、うまくいけば10月にリリースできるんじゃないかと。希望だけどね・・・それがコケたら、たぶん来年1月まで待つことになるだろうな(笑)」
――シングルとして過去に発表された曲は収録されそう?それとも新たに全曲書き下ろすつもりですか。
M「うん、新しい曲だけにしたい。それも理由のひとつなんだよ、こうしてシングルのコンピとしてCD1枚にまとめたのは。7インチのアナログだけだと手に入れにくい人もいるだろうし、聴きたい人みんなに聴いてもらいたいからで。だからこのCDに入ってる曲がアルバムにも入るとは今の時点では僕は思わないし・・・まあ、ギリギリになって『いや、この曲を入れた方がアルバムとして良くなるぞ』って急に気が変わらない限りは(笑)。それと発表済みのシングルに関して言えるのが、CDでまとめて聴くと我ながら1枚ごとに音質が違うよなあって感じる点で。だからアルバムを作る段になったら、もっと一貫した音にしていきたいなと思う」
――音質が違うというのは、純粋に使用した機材の違い?
M「そう」
J「でも、それも僕達にとっては経験だったわけだからね。最初のシングルなんていつ録ったんだっけ?」
M「あれは06年の1月にレコーディングした」
J「ってことは、一番新しいシングルとの間に1年半も開きがあるってことだしね」
――バンドの成長を聴くことができる日記みたい。
J「(笑)かもね。まあ、CDの曲順は逆だから過去に遡っていくわけだけど」
M「このCDを聴くのがいいセラピーになるって誰かに言われたっけ(苦笑)。あながち間違ってもいないかもね・・・」

special thanks to jason and matt

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