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Joan As Police Woman

Joan As Police Woman

Hymn for life

ジョーン・アズ・ポリス・ウーマン(以下JAPW)――アンジー・ディッキンソン主演の70年代米TVドラマ「Police Woman」にちなんだこのちょっと風変わりな名前に出くわしたのは、彼らのファースト・フル・アルバム「Real Life」が発表された2年前のことだった。ソウル・ミュージックをベースに、ピアノやヴィオラ、ヴァイオリンなどアコースティック・サウンドで繊細に縫い上げられたエモーショナルでエレガントな哀歌――アル・クーパーやロバータ・フラックを思わせる都会的なポップ・マナーと高い音楽性で綴られる詩心(たとえばジョニ・ミッチェルのように、大人の女性の真情が自然にあぶりだされている)にたちまち心惹かれたし、エイミー・マンやフィオナ・アップルのように知性と美貌を兼ね備えた女性アーティストとの新たな出会いを感じ嬉しく思った。しかし02年以来ブルックリンを拠点に活動してきたこのユニットの中核であるシンガー・ソングライター=ジョーン・ワッサーの意志の強そうな高い頬骨を眺めるうち、やがて遠い記憶が「あれ?この人・・・」と筆者の頭の中でひとつの像を結び始めた。

90年代初頭のUSオルタナ・シーンで異彩を放った4人組ダムビルダーズにおいてヴァイオリンをメインで担当していた彼女(当時はドレッド・ヘアでした)は、恋人ジェフ・バックリィの死後いくつかのバンドや数々のセッション・ワーク(ルー・リード、シザー・シスターズ、ジョゼフ・アーサー他)を経てアントニー&ザ・ジョンソンズ(アントニーは「Real~」に1曲客演)に参加、更にはルーファス・ウェインライトに請われ一時期彼のバンドでプレイしていたこともあるキャリアの持ち主。クラシック音楽からパンク~オルタナまで包括するその幅と多彩さを思えばJAPWサウンドの高度なフュージョン性も不思議はないし、いくつもの変化とトライアルを積み重ねた上で達した洗練だからこそ、その一聴シンプルなフォルムの歌からは深い奥行きと美が立ち上るのだと思う(とはいえ今回初めて実際に会うことができたジョーン本人は快活な笑顔が素敵な女性で、インタヴュアーを逆に「取材」するお茶目な面もあり。アートに向けるシリアスさと実人生でのユーモアのバランスがいい人だなという印象です)。
JAPWのファースト・アルバムには「We Don‘t Own It」という曲が収録されている。故エリオット・スミスに捧げられたこのさりげなくも美しい弾き語り曲は、もはや誰も真相を知る由のない彼の不可解な死に向け「手渡してしまいましょう/私達のものではないのだから/私もあなたも/あの夜の終わりを知ることはできない」と歌いかける。彼女自身の体験が想起されるだけに重い曲でもあるのだが、(恐らく多くのESファンが抱いていたであろう)複雑な感情を射抜いてくれたこの曲には個人的にすいぶん救われた。悲しみは、きっと永遠に尽きない。けれどその損失そのものがオブセッションになってしまう時、悲しみは残された者の心まで蝕み始めてしまう。残された者にできることは、だからたぶん、自らを心の檻から解放することで逝ってしまった誰かの存在を心の奥深くに丁寧に封印し、前に続く新たな日々を精一杯生き続けることなのだと思う。「愛されることがとても幸せ」と生きる喜び(とそのコインの裏表である苦悩)を素直に刻んでみせた新作「To Survive」は、そんな風に誠実に人生を生きている人々の心に響くヒューマンなエールだと思う。

ちなみに、ダムビルダーズの盟友デイヴ・ダービーもメランコリック・ポップの秀逸ユニット=ブリリアンティーン~ソロを経て現在Dave Derby&The Norfolk Downsとして活動中。ルー・リード~ローレンスを思わせる歌声と成熟したフォーク・ロック・サウンドが素敵な彼の作品も、ぜひ聴いてみていただければと思います。

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新作のジャケット写真、とても美しいですね!もはや「ポリス・ウーマン」って形容が当てはまらない気もしますが・・・?
アハハ!(ひとしきり爆笑)
ラファエル前派のヒロインみたいじゃありません?
ありがとう!それはいいわね、進歩したってことでしょ!(笑い転げる)じゃあ今回は「ラファエル前派のジョーン」ってことで。響きは似てるよね?
バンド名としては長すぎかも・・・でもアルバムごとに名前を替えるのも面白いかもしれません。
うんうん!そうしようかな?
ははは!それはともかく、ニュー・アルバム「To Survive」ですが、今回も前作同様ブライス・ゴギンがプロデュースで基本的なプロダクションの布陣は変わらず?
うん。でも、ドラムスは今回から別のプレイヤー(パーカー・キンドレッド。かつてジェフ・バックリィ・バンドにも在籍)に担当してもらってる。
ベン(・ペロウスキ)はどうしたんですか?
んー、彼とは長いこと一緒にプレイしてきたし、いい形で袂を分かったっていう。思うに、ベンって人はそもそもあんまりツアーが好きな人じゃなかったんだろうな。もちろん、その気持ちもよく理解できるけど。それもあったし、彼自身自分のバンドをやっていて、他に色んなプロジェクトを抱えている人だから。
なるほど。ベース・プレイヤーのレイニーも自分のユニット(Dead Air)で作品を出しているし、「ジョーン・アズ・ポリス・ウーマン」というトリオ・ユニットではありながら、実質はあなたひとりと考えていいんでしょうか。
うん、そう。一貫しているのは私だけ。実際自分ひとりでもショウをやるし、レイニーが忙しい時はブルックリンに住んでる他のプレイヤーにライヴに参加してもらったり・・・。
ああ。長くNYに住んでいるあなただからお聞きしたいんですが、どうして近年こんなに優れた才能がNYから次々に登場しているんだと思います?常にミュージシャンが多く暮らす大都市とはいえ、特に00年代に入ってから若くクリエイティヴなアクトがドーンと流出したような手ごたえがあって。
そうよね。それは思うに・・・ニューヨーク・シティっていうのは、多くのアメリカ人が気分的に楽になるために、快適に生きるために集まる場所じゃないかってことで。
ははは!
でもそうでしょ??NYCはクリエイティヴなアートの中心地だし、それはコスモポリタンな大都市、たとえばロンドンや東京にも言えることだと思う。つまり、似た者同士が同じ場所に集まってくるってことよね。というのもアメリカ全土を考えると、そこには本当に、実に様々な意見や考え方の持ち主がいるわけだけど、彼らは必ずしも創造性と歩調を合わせてくれるわけじゃないから(苦笑)。それもあるし・・・NYの一部にはすごく拝金主義というか、ビジネス至上主義な面もあって。だからマンハッタンなんて誰も住まなくなって、みんなブルックリンに移っちゃったっていう。でも、おかげで素晴らしいものがクリエイトされることになった。アーティストがそれぞれ色んな場所に散らばるんじゃなく、ひとつの区、ブルックリンに集合することになって、みんなで力を合わせて何かやるんだって雰囲気も強いし、ライヴ・シーンも活発で・・・ほんと、お互い糧を与え合ってる感じ。それが私としてはグレイトだと思う。
なるほど。以前からお聞きしたかったんですが、EPリリースもその前にあったとはいえ、ファースト「Real Life」があなたにとってのいわば本当の意味でのステートメント作でしたよね。
そうね。
90年代からプロのミュージシャンとして活躍し様々なバンドに参加してきたあなたですが、振り返ってみて、フロント・パーソンとして、シンガーとして歌い始めるまでなぜこんなに時間がかかったんだと思います?
そうね・・・まず、先生についてヴァイオリンを正式に勉強していたこともあって、あの楽器が長い間私にとってのクリエイティヴなアウトレットだった。ヴァイオリンをプレイすること自体本当に好きだったし、楽器としての可能性を探究すべく本当に色んなやり方を試しもした。違うタイプのアンプを通して鳴らしてみたり、リズム楽器としてプレイしようとしてみたり。でも、ある時点まで来たら「もう充分なやり甲斐を感じられない」って気がしてきて。要するに長い間ひとつのことに取り組んできたために、これ以上もう前に行けないって地点に行き着いてしまった、そんな感覚がちょっとあった。そこで割りとすぐ頭に浮かんだのが、「じゃあ、今度は曲を書いて歌ってみては?」ってことで。だからって、以前から「歌えたらいいのに」なんて思いをあたためてたわけじゃないし、ほんと、ヴァイオリンを弾いているだけでもハッピーだったんだけどね。そこでギターを習い歌にトライし始めたわけだけど、実際歌うことになったら、さて自分は何者なのか、それを見極めるのに時間がかかって。歌うとなったら本当にもう・・・「どうしたらいいんだろう?」って感じだったし、自分は何を歌いたいの?って考えることにもなった。要するに、自分はどんな人間なのか自問することになったわけよね。
そうやって自分の内面を覗き込むのは、実は怖い経験だったりしますよね。
(苦笑)そうそう!確かにおっかない経験ではあった。というのも、それまでは自分をちゃんと把握しているつもりだったのに、突然アイデンティティを見失ったというか、自分が何を歌にして表現していったらいいのか見当がつかない、そんな状態に陥ったわけだから。だからそのプロセスに時間がかかったし、また、どうやって自分自身の声を使って歌うか学ぶこと――他の誰かの歌い方を真似するんじゃなく自分の声で歌えるようになるまでに、やっぱり時間が必要だった。それと、ちょっとした勇気もね。そんな風に自分を見つけて、自分の歌いたいことをはっきりさせるまで結構時間が経ったし・・・いったんその術を見つけてからはステージに立って歌うだけの度胸も出てきたし、ライヴで歌うことでもっと学ぶことにもなって。どの曲はありなのか、自分で歌っていて気分がいいのはどれか、また逆に、すっきりプレイできないのはどんな曲か、だったらどうやってそれをもっといい方向に変えていけるだろう?・・・とかなんとか色々とね。一方で、自分の音楽を模索している間も私は他の人達と一緒に音楽を作っていたわけで、彼らからも学んでいたことになる。だから、そうした色んなプロセスが合わさってのことだったんだと思う。
ミュージシャンの知人は周囲にいくらでもいるわけで、やろうと思えばそれこそ3日間でアルバムを作るなんてこともあなたには可能だったと思いますが、ムラのあるラフ・スケッチ的作品を慌しく作るのではなく、時間がかかってもいいから自分の声と言葉をちゃんと見つけた上でレコードを作りたかった、と。
うん。でも、それってヴァイオリンを勉強した経験も多少関係しているんだと思う。ああいう風に厳しい訓練を重ねた時期があると、それがある意味その人間にとってのスタンダードになるものだから。もちろんラフに歌うのが性に合う人もいるだろうし、私もそういう作品は好き。パンク・ロックは大好きでよく聴くし、実際ああした音楽は辛い時期を乗り越える助けにもなってくれた。ただ私自身について言えば、もっと練られたものを歌うのがしっくりくる。自分が音楽を作る段になったら、もっと・・・完成度の高いものに惹かれるのね。
先ほど周囲の人々からも学んだとおっしゃっていましたが、現在もっともユニークで美しい歌声と世界観を誇る天才のひとりと言えるアントニー(&ザ・ジョンソンズ)そしてルーファス(・ウェインライト/「To Survive」収録「To America」にデュエット参加)を間近で見守ることは、インスピレーションをもたらされると同時に「自分にこんなことができるのか?」みたいな引け目を感じる経験でもあったんじゃないでしょうか。
うん、間違いなくそれは感じたし・・・その通りよ。あんなにすごい才能の持ち主達とプレイすることは言うまでもなく素晴らしい経験なわけだけど、一方で自分自身の音楽にとってはちょっと脅威を感じるものでもあったっていう。彼らが素晴らしい曲を歌うのを傍で見ながら、「・・・いったいどうやったら自分もあんな風になれるんだろう?」なんて感じるわけで。だけど、そこでふと「でも、自分は彼らになれっこない」って点に思い至る。自分を他者と比較したって意味はないんだし、自分に備わったものを活かして、そこでベストを尽くすしかないんだっていう。人それぞれ持っているものは違うわけだから。だから自分自身の前にあるクリエイティヴな道を信じて歩んでいく限り、大丈夫、なんとかなるってことだと思う。
あなたの音楽について私が好きな点のひとつに、飾らない正直さというのがあります。音楽と歌詞の双方でそれは当てはまるんですが、サウンドはドラマティックでも大げさなものでもないし、空間があってかつ繊細。それがパーソナルで飾るところのない歌詞とマッチしていますが、楽曲を書く時そうやって自分に対してオープンであることに困難を感じることはあります?
そうだな・・・でも自分に正直であること、そういう在り方が本当の意味で自分を解放してくれたんだと思う。それって人間誰にでも言えることじゃないかと思うけど、自分が曲を書いている時――その多くがニュー・アルバムに収録されてるわけだけど――書き上げてみて「うーん、これはちょっとトゥー・マッチだな」って感じることもやっぱりある。あまりに真情が出ているから、レコードに収めて発表することなんて無理、みたいな。でも曲からしばらく離れてみてまたその曲に戻ってくると、逆に「もしもこの曲になんらかの抵抗を感じるなら、それはたぶん、この曲にとても大切なことが含まれているからなんだ」って感覚が生まれてくる。自分に嘘をつかず正直でいること、そしてその状態にあることを心からエンジョイできるようになるのって、人間にとってとても大事な側面なんじゃないかな・・・そうすれば自分を解放してあげることができるし、本当の意味で書き手としての喜びを感じることができるようにもなると思う。だから、私はいつだって自分の中から思いを外に吐き出そうとしているし・・・というのも、自分がとりわけ特別な存在じゃないってことは自分でも承知しているし、みんなどこかしらそういう思いは抱いているんじゃないかしら。そんな風に自分の無力さを感じる時にできる最善のことって、それを誰かにコミュニケートしていくことだと思う。で、願わくは他のみんなもそれを聴いて少しだけでもいい、気持ちが楽になってくれてたらいいなって(笑)。
たとえばダムビルダーズなど、以前のあなたがプレイしていたハードでダイナミック、アグレッシヴなサウンドに較べてJAPWの音楽はソフトでスローですよね。あなたがご自分の異なる側面とチャネリングし始めたのはもちろんでしょうが、この変化には年齢も関っていると思います?
うん、時間が経つのに伴って、自分に対してもっと快適になれるようになるといいなってみんな思うわけよね。成長すること、もっと長い時間を過ごして、人生経験を重ねて・・・ありがたいことに、おかげでずいぶん自分も丸くなったと思う。
もっと若い頃は、おてんばで男勝りなところもあったんでしょうか?
私は・・・若い頃にメンバー全員男性のバンドでツアーして回っていたから特にそうなんだろうけど、「タフになるんだ」って自分自身に言い聞かせていたところがあって、自分だって他のみんなと同じように振舞える、そう強がっていたわけ(苦笑)。それこそ「タフガイ・プロブレム」(ダムビルダーズのEPに同タイトルの作品がある)よね。
ああ、なるほど。
でも実際は、たぶんすごく内面で不安を感じていたんだろうし、同時にそういう自分の本当の感情をまったく認識できていなかったんだと思う。というのも、自分自身を客観的に観察する術を学ぶのは楽なことではないから。そうやって「自分は不安を抱えている」、その点をいったん認めることさえできたら前に進んでいけるわけだけど、そこに至るまでがとても大変だっていう。たぶん昔の私は「自分は怯えている」って認めること自体を恐れていたんだと思うし、自分の感情をどうやって表現していけばいいのか、そのためのヴォキャブラリーを持ち合わせていなかった。でも、そのための言語を少しずつ学んでいくことは、怖いと同時に自分のためにもなる。少しリラックスできるようにもなるし・・・物事を本当の意味で感じられるようにもなる。自分を信じてあげることは大きな進歩だし、と同時に自分の行いのもたらす結果を正面から受け止められるようにもなる。それは、後から振り返るととてもやる価値のあるプロセスなんだけど、実際に体験している間は、自分でもどうなるか分かっていないっていう。自分はどうなるんだろう?この暗い穴に落ち込んで、二度と戻ってこれないんじゃ?なんて気すらする。未知の体験だから、ほんとにそういう感覚なのよね。だから・・・うん、自分の思いをこうやって無理なく表現できるようになって良かったと思う。
今おっしゃったことは、前作以上に心休まるトーン、かつさりげない作りの新作からも感じます。肩の力が抜けたことでより官能的であると同時に、人々をなだめる子守唄のような優しさを持つ作品ですよね。
それは嬉しいなあ。ありがとう!
よりグルーヴィでリラックスした作品だと感じますが、あなた自身にとっての前作と今作の違いと言ったら?
そうだな・・・うん、でもあなたが今言ってくれたこと、とても気に入ったわ。ありがとうね!でも私としては、この作品も自分のこれまでやってきたことの延長線上にあると思っているし・・・自分が自分自身に対してもっとハッピーになれて、かつ無理なくソフトになれた結果なんだと思う。音のヴォリュームという意味でも、また感情の面でもね。
とはいえ「Furious」のように、本作には抑えた中にも激しさを感じさせる曲もありますよね。今のあなたが怒りや憤りを感じる対象といったら何になりますか?
ああ、あの曲は「Real Life」のツアーをやってる時に書いたものなの。実際ここ(イギリス)に滞在中で、新聞を読んでいてアメリカ政府の様々な行いについての記事を目にしたんだけど、そこですごい怒りと同時に無力感を抱いてね。あれにはかなりのフラストレーションを感じたな・・・アメリカで暮らしていると、すごく周りから隔離されてしまうのね。とても考え方が狭い国だし、かつ自己中心的にもなってしまう。メディアにしてもとても偏っているし、実際何が起きているのか真実がちゃんと報道されないことだってあって、間違いなく世界的な視野には欠けていると思う。そんな中で、イギリスやヨーロッパを訪れてもっと規模の大きい広い世界に触れることになって、自分の生まれた国がその世界とどんな関係を築いているか知ることは、すごくこう、目を開かされる体験なわけ。で、潜在的に巨大な力を誇る(自分の)国が、その権力を間違った方向に使っていると知った時は強い怒りを覚えたし――それだけでも充分なんだけど、それどころか自分の国は他の国に対してその誤ったパワーを行使しているっていう!だったらもう、迷惑だから自分の国に対してやりなさいよ!っていうね(苦笑)。
(笑)。
他の人達にまで迷惑をかけるのはもうやめて、みたいな。本当に、信じられないくらいひどい話だと思ったし・・・そうね、だから今の自分にとって、特定の個人に対して怒りを感じるのはもう難しいな。というのも、怒りよりむしろ同情を感じてしまうから。自分の周辺にいる人に対してもそうなんだけど、たとえば誰かが自分に対して敬意の感じられない振る舞いをとったとしても、それはそれで彼らの考え方、それはそれでひとつの意見じゃないって風に捉えられるようになったから。だけど、大きな権力を保有する集団に属するような人々――彼らに対しては、自分はまだまだ怒りを覚えることができる。
今回のアルバムには大きな意味での母性、何かを守り生き抜いていく女性らしい強さも感じるのですが、ここしばらく世界は色んな意味で危機に瀕しているわけですよね。だからこそあなたの本能的な強さが無意識に出てきたのかな?とも感じました。女性の本能は何かを保護しクリエイトするものだと思いますが、男性というのは基本的に破壊する生き物と言えますし。
(爆笑)アハハハハハ!いや、ほんとそうだと思う。でも、それがいいバランスなんだと思うな。破壊的なアートがあるからこそ、一方で他の誰かが人々を支えて励ますような音楽を作ることに価値が生まれることにもなるわけで。でも彼らは・・・競争的よね。まあ、女性だってある意味すごく競争心が強い生き物だと思うけど。
(笑)でも、女性は「姉妹の連帯」みたいな感覚も持ち合わせてますよ。
ああ、確かに。
ファーストがより個人的な思いや愛にフォーカスしたものだったとしたら、新作ではもっと大きな感情を、たとえば集団的無意識に向けて歌おうとした部分もあると言えますか?
・・・ありがとう!私、本当にそういう思いは抱いているから。ほんとに・・・「人間達を守らなくちゃ」みたいな感覚が、どこかにとても強くあるのよね。もちろん、そういう思いをこうして自然に表現できるようになったのは、ひとえに今の自分が人生のこの地点にまで辿り着けたからなんだけれど・・・これがたとえば昔の自分だったら、「めそめそ弱音を吐いてる、意気地ない」なんて思ってたんじゃないかな?だけど、こういうことをきちんと表現できるのって、実はとても力強くていちばん勇気が必要なことだと思う。要するに、自分が感じていることをありのまま包み隠さず表現できるようになるってことだけど。だから、うん、あなたにそう言ってもらえて本当に嬉しく思う。クール!

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