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Patrick Wolf

Patrick Wolf

Cub is Wolf now

祝再来日!ということで、音楽ジャンルはもちろん性別まで(!)、あらゆる「壁」を撹乱・超越していく注目の半ズボン王子:パトリック・ウルフのインタヴューをお届けします。王子などと書くと「あー、またミーハー女の戯言かよ~」とコケにされそうですが(ミーハーなのは認めます、ハイ)、ヴァイオリン他クラシックの基礎をきっちり学んだ挙句にエクトロクラッシュなどデジタル・パンクに急シフト、アヴァンギャルド・バンドでの活動を経てキャピトルK率いるレーベルFaith&Industryからデビュー・アルバム「LYCANTHROPY」(03年:後に独TomLabより海外リリース)をリリースする頃=20歳までには、ジョニ・ミッチェルなどフォーク~シンガー・ソングライターの成熟した音世界に傾倒していたというんだから、かなりの早熟児。もちろん、彼のように若くして幅広い音楽性/知識を誇るミュージシャンは決して珍しくない。しかし、パトリック・ウルフには自らを素材にサウンド、ヴィジュアル両面から純粋なファンタジーをプロデュースしようとする大胆さがあるし、その在り方にボウイを始めとするシアターとロックを結びつけようとしたグラム・アクトのアートへの野心、あるいはケイト・ブッシュやビョーク、PJハーヴェイなど、1作ごとに異なる肉体を提示する女性アーティストのしなやかさ~こちらの予想を裏切る痛快さを感じて興奮してしまうのだ。体育会系白人青年ギター・バンド(=ガキ)、あるいは毒にも薬にもならないバラッド歌い(=オヤジ予備軍)がひしめく今のイギリスで、そんな彼の存在がどれだけ際立っているかは言うまでもない。

宅録フォークトロニカとチェンバー・ポップ(マグネティック・フィールズ、ディヴァイン・コメディら)の中間を行くユニークな存在として、またカラフルなキャラクター(エキセントリックな手作り衣装も注目の的)も相まってカルト的人気を誇ってきたが、本国イギリス他海外では半年以上前にリリースされた最新作「マジック・ポジション」で晴れて日本メジャー・デビューと相成った。閉じた内省=繊細な心情と、根底に潜む攻撃性~アナーキー気質が拮抗する前2作も素晴らしかったが、その背景には世間の価値観や個性を飼い殺しにする「鋳型」社会からどうしたって浮き上がってしまう、多感ゆえに疎外を感じずにいられない若者(大袈裟な表現かもしれないが、イアン・カーティスもトム・ヨークも、突き詰めればパトリックと同じ「ストレンジャー」だった)特有のピリピリ張り詰めた神経があったと思う。しかし、「マジック~」はいい意味で吹っ切れた開き直りを感じさせるブレイクスルー作だし、それに見合う抜群にポップ&チアフルな楽曲はもちろんのこと、テクニカラーなニュー・イメージも打ち出してオーバーグランド浮上への準備は着々整いつつある(バーバリーの07年秋冬キャンペーン・モデルに起用され、売れっ子モデル:アグネスと共演を果たしたのも話題)。人を泣かせるのは簡単だが、人を勇気づけ、ポジティヴな笑顔をもたらすのは難しい。アンダーグラウンドからメインストリームへ、哀愁のトルバドゥールから幸福な王子へ――今まさに大いなる変容を経つつあるパトリックの「旬」を、11月14日渋谷DUO公演でお見逃しなく!

――最初にあなたのライヴを観たのは05年、ロンドン:ボーダーラインでのギグ(セカンド「WIND IN THE WIRES」リリース時)だったんですが、その時以来、これはマーク・ボラン、デイヴィッド・ボウイ、あるいはケイト・ブッシュ~ビョークの流れを汲む正真正銘のポップ・スターになる可能性のある人だ!と思っていました。それだけに、メジャー移籍は私にとって逆に嬉しい話だったんですが、実際のところはどうだったんでしょう? アーティスティックな面で妥協しないアクトとして、メジャーへの移籍は大決断だった?それとも、「機が熟した」みたいに自然な成り行きだった?
これまで以上に大きなレベル/規模で活動するのにふさわしい楽曲が揃っていた、というのは確かだけれど、メジャー・レーベルと仕事するようになってからも、自分としては妥協したことはこれまで一切なかったよ。その時々、どんな表現媒体を使うのであれ、自分のヴィジョンは常に伝えるようにしているから。
――統一感のある「WIND~」に較べると、最新作「マジック・ポジション」は音楽スタイルやダイナミクス、音のトーンの面でもっと多彩で、より広がりのある作品だと感じます。これは、あなたの中にあるいくつものキャラクターを反映させるべく、楽曲単位でフォーカスしたせいでしょうか。それとも、ウィーン、ロンドン他、複数の都市をまたいでレコーディングされたこの作品のプロダクションの影響ですか?
そうだね、前作にあったコーンウォール(英南西部の半島)の辺鄙な雰囲気よりも、この作品では確実に、もっと「国際的」な事柄に影響されている。「WIND~」を書き上げた後に、突如コンサートのブッキング・エージェントが付いたんだよね。以来、本格的にツアーで色んな場所を回るようになって、おかげで自分の視野にもより多くのものが付け加わったし、遥か彼方にある事柄にも手を伸ばすようになった。「マジック~」は、誰かを求める気持ち、愛、そして愛への祝福という感情が感じられる作品だと思ってる。
――「マジック~」は序曲、そしてフィナーレで終わるという形式をとっていて、前奏曲~結び(エピローグ)に挟まれたファースト「LYCANTHROPY」に似た構造ですよね。「LYCAN…」はひとりの少年が成長する中で感じる葛藤、また、彼が成長期に経てきた闇を克服する様を描いた作品だと思うんですが、「マジック~」のストーリーを要約するとしたらどうなりますか?
ストーリーは、音楽そのものに語らせるべきものだよ。僕は音楽を通じて物語を生み出しているんだ。
――アルバム2曲目「The Magic Position」の歌詞に出てくるように、この作品の何曲かはメジャー調のキーで歌われていて、それがアルバム全体に開放的でインタラクティヴな、これまで以上に強烈で、ちょっとクセになるほどの活気を与えています。あなたはこれまで、基本的に「自分自身であることの大切さ」そして「他人の意見に振り回されないこと」を歌ってきたと思うんですが、今回のアルバムでは同じテーマをより確信的に、力強く歌っていると感じました。このポジティヴィティはどこから生まれたんでしょう?明朗なアンセムを書くきっかけになったのは何?
愛、トラブル、欲望、自由、そして2年にわたるハックニー・ウィック(東ロンドン地区)でのイングリッドZというアーティスト(ヴィジュアル・アーティストで、セカンド「Wind~」のアート・ワークやビデオ制作を担当)と繰り広げたアナキズムのおかげだね。あれは素晴らしい時期だったし、おかげで僕は、軽い人間嫌いの状態に陥っていたところから引っ張り出してもらえたんだ。
――⑥「Pagpie」はぞっとするような不気味さのある、しかしこのアルバムのハイライトのひとつになる楽曲だと思います。この曲でのマリアンヌ・フェイスフルとのコラボレーションがどのようにして実現したか、教えてください。
友達のファニーが、マリアンヌの伝記本を僕にくれてね。で、僕がこの曲に含めようとしていたニュアンスをマリアンヌが理解してくれるかどうか、ためしに彼女に絵を送ってみたのが始まりだった。実際コラボレーションに漕ぎ着けるまでには相当時間がかかったけど、すべてどんぴしゃなタイミングで決まっていったな。サウス・ケンジントンの地下鉄駅でばったりマリアンヌの恋人に出くわして、そこで彼を近くのピアノ屋まで引っ張って行って、ショウルームに飾ってあったピアノを弾きながら、彼にあの曲をプレイしてあげたんだ。そしたら彼がマリアンヌに「いい歌だから、君達ふたりは会ってみるべきだよ!」って話してくれてね。その6ヶ月後には、僕はマリルボーン(西ロンドン)のホテルの一室で、酔っ払いながらマリアンヌとジョニ・ミッチェルのレコードを聴いていたっけ。その翌日に、僕達はあの曲をレコーディングしたんだ。
――光/影、エレクトロニック・ビート/アコースティック、想像力/現実、調和/混沌、暴力/詩、伝統/モダン―あなたの音楽には、相反するふたつの要素の対立がその中心にあると思います。こういう可変的で、時に矛盾する要素をそのまま手を加えずに表現することで、オーディエンスに何を伝えたいのでしょう?また、音楽を通じてこうした対極要素をひとつにまとめ、カオスになんらかの「形」を与える行為は、あなた自身の内面にある矛盾と向き合うのに、役立っていると思いますか?
うーん、自分自身のことをそんなに深くいちいち分析することはできないよ!それって、意味がない行為だと思うし。でも、自分自身が矛盾した人間だとは、僕はまったく思っていない。僕は発明していきたいし、この世界だって新たな発明やこれまでにない物事の考え方、そしてより良い自己表現の方法に飢えている。僕はすごく若い頃から、豊かだろうが貧しかろうが、工場で働いている人間だろうが誰だって関係ない、自分は人々のインスピレーション源になるんだ、そう心に決めていた。「これが自分にとって最後の日だ、だからこの一日、そして世界を掴め」って具合に毎日を生きるべきだ、そう僕は信じている。夢遊病者みたいに、押し黙ったまま人生を過ごしちゃいけないよ。
――あなたはこれまで、それこそ遊牧民のように各地を旅してきましたが、あなたのルックス/イメージには昔ながらの牧歌的な英国の田園風景やロマン派のカルチャー、あるいはビクトリア朝のロンドンの町並みなどが強く残っていますよね。こうした、いわば日々消えつつある物事、あなたが生まれる遥か以前の時代と波長が合うのはどうしてだと思いますか?何が魅力なのでしょう?
あの頃の洋服の方が、僕にはずっと似合うんだよ!まあ、もともとは以前やってたバンド、メゾン・クリミノーの頃に遡るんだけどね。僕達はエレクトロクラッシュに飽き飽きしていたし、80年代にも退屈してて、もちろん70年代にも、60年代にもうんざりしてたっていう。あの頃は、どの新人デザイナーもえらく高価な洋服ばっかり作っていてね。だから、僕達はバカらしいほど高い服を買う代わりにグリニッジ・マーケット(ロンドン南部のグリニッジで開催されるフリー・マーケット)に足を運んで、アンティークの売人から、サンドイッチ1個くらいのボロ値でヴィンテージの半ズボンを買い漁ったりしていたんだ。でも、そんな時期ももう過去のものだね。僕はいつも未来に目を据えているけど、エコロジーの観点から見ると、僕達の世代の未来は寒々としたものだと思う。だから、アーティストとしての僕は、自分が生れ落ちたこの侘しい時代ではなく、むしろエリザベス調だったりルネサンス期からインスピレーションを受け取ることの方にエキサイトさせられるんだろうね。
――7月にロンドンで行なわれたLOVEBOX WEEKENDER(グルーヴ・アルマダが企画するフェス)でのパフォーマンスはパワフルかつ大胆、活気に満ちていて本当に最高だったんですが、お客の一部はそのエネルギッシュさにやや引いていましたよね(半裸でノリノリのパトリックが、ステージ前のカメラ・クルーの上に馬乗りになってセクシャルな動きを見せるなどかなりゲイなパフォーマンス)。ああやって、反感を買いかねないリスクを負う覚悟はできている?
もちろん。僕はいつだってリスクを負おうとしてきたし、ただ、これまでなかなかそれを実践に移す機会に恵まれてこなかったってだけのこと。僕は、リー・バワリー(オーストラリア出身の80年代UKゲイ・カリスマ。女装他目を奪う奇抜なDIYコスチューム&メイクとパフォーマンスで、クラブ・カルチャーに大きな影響を与えた)流パフォーマンスの教えを享けた人間だし、そこにはモラルも恥もないんだよ。
――音楽的には異なりますが、あなたはUKインディ・ギター勢にありがちな「群れ/ムラ意識」から離れ、風変わりで目立つことを恐れない若手バンド、たとえばクラクソンズやCSSといった面々と精神面で近いのではないかと感じます。あなた自身、たとえば3、4年前とは時代の空気が変わってきて、今のイギリスのオーディエンスがより強い個人、あるいは個性に対してオープンになってきたと思いますか?
そうなんじゃない?インターネットのおかげで、世界はより多様性に満ちた、危険でエキサイティングなエリアに門戸を開いたと思うし。まあ、僕はレコード会社でマーケティングをやってるお偉いさん方とは違うから、イギリスのリスナーの嗜好がどうなってるかとか、そこらへんは大して分からないけどね。ただ、僕が間違いなく言えるのは、コンサートを観に来てくれるオーディエンスのことが本当に好きだってこと。何回も繰り返し足を運んでくれるお客も出てきたし、そんな彼らの顔をクラウドの中に見つけるたび、「ああ、僕の作品は誰かの人生になんらかの意味をもっているんだ」、そう感じられるようになってきた。そうなったら、作品を作り続けるしかないよね、やっぱり。
――音楽、そしてアートを生み出すことは、あなたにとってどんな意味がありますか?
僕の人生、この生命を、僕は音楽に捧げるだろうね。僕の生み出す作品は、僕自身よりも優れているから。

パトリック・ウルフを脱兎チェック!


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