エイプリル・フールにギグ・・・なんて、もしかしてひねくれで知られるマーク・E・スミス(以下MES)にかつがれてるのかも?と一脈の疑念(それはそれで、いい話ですが)を抱きつつ、会場に足を運ぶ。というのも、ザ・クラッシュのWhite Man in Hammersmith Palaisに歌われたことで知られるハマースミス・パレ(もとはダンス・ホール。ハマースミス宮殿ではありません、念のため)は取り壊しが決定し、建物そのものは年内存続するものの、ライヴのブッキングは今後打ち止め。都市開発、騒音に対するクレームなど様々な要因が重なっての閉鎖だそうだが、過去3年の間に自分がここでライヴを観たのは実際1度きりだったし、プレミア・ロック・ヴェニューとしてのピークは過去の話になりつつあったのだろう。それもあって、3月いっぱいエンター・シカリ、ジェイミーT他多くのアクトがこの会場のステージを踏んだのだが、不思議なことにいくつかのメディアが「ハマースミス・パレの最後のギグは3月31日、ザ・グッド・ザ・バッド・アンド・ザ・クィーン公演」とアナウンスしていて、確かにポール・シムノンがいるからGBQはめっちゃハマるんですけど、えー、ザ・フォールが次の日プレイしますけど・・・?と混乱させられた次第。
しかし、足を踏み入れれば四月馬鹿どころかソールド・アウトの大賑わい。「パレ最後の姿を見届けたい」という年季の入った世代が大半を占めているものの、過去3、4年の間にポスト・パンク再検証がひととおり進み、中でもひときわ異彩を放つ究極のアンチ・エスタブリッシュメントにして今も現役、故ジョン・ピールに愛されたザ・フォールに対するリスペクト&興味が盛り上がったからだろう、Hex Education Hourが発売された頃にはまだ生まれていなかったであろうお肌ツルツル~な若者も結構混じっている。代表作リイシューや総括コンピといったカタログの充実ももちろんだが、The Real New Fall LP(03年)以降、Fall Heads Roll(05年)、Reformation Post TLC(07年)と、ザ・フォール回春(?)とも思える勢いに満ちた力作群を連打し(Fall Heads~の頃、BBCのメジャーな音楽番組Laterに彼らが出演したのには驚かされたが、「ジュールズ・ホランドのブギウギ・ピアノはなしにしてくれ」とリクエストしたところが、辛辣MESらしい)、ツアーもがっちり続けているところが新波ファン誕生の最大のキー。継続は、力なり(ちなみに、非公式ながら充実しまくりのファン・サイトがあるので、ザ・フォールのワンダフルでおっかない世界に興味のある方、ペイヴメントやゼロックス・ティーンズ好きな方は、どうぞ http://www.visi.com/fall/index.html)。
客の9割がヘッドライン目当てなだけに、前座4組(うち1組は、カルト・コメディアンとして知られるテッド・チッピントン! 『オチのない寒いジョーク』が売りのポスト・モダン漫談師で、観客から「引っ込めー」「ちっとも面白くねー」と罵声を浴びせられ、ビール缶を投げつけられるほど喋り続ける・・・という、実にザ・フォール的芸人。アークティック・モンキーズのアレックスが敬愛するジョン・クーパー・クラークも、かつてザ・フォールのMCを務めたことがあります)は気の毒に感じるほど相手にされてなかったが、短いDJスロットを間に挟んでようやくバンドが登場。ベース2本による屈強なハンマー・ビートがばっこんばっこんつるべ打ちされる中、エリーニ(Keys/MESの最新妻で、サディスティックなビッチー美貌がファンに崇められている)&スーツ姿の御大MESがステージに現れ、「グゴウオォォ~」の歓声が湧き上がる。
常に解体・変化を繰り返すことで知られるザ・フォールだが、若いアメリカ人ミュージシャンから成る現ラインナップ(Reformarion~もこのメンバーでレコーディングされている)は「ニヒルなダダ・ガレージ・パンク」というザ・フォール・サウンドの核をきっちり把握していて、横に(無駄に)広いステージを歩き回り、突如ギターのネックを握ったり、いきなり舞台袖に消えたりするMESの予測不可能なアクションにも動じることなく、機械並みにモノトーンなバック・トラックを淡々と鳴らし続けて素晴らしい! MESも「アメリカ人は勤勉で優秀」と評していたけど、特にヒゲのロブ・バーバート(B)は笑顔を浮かべたMES(!)にマイクを任される場面があるほど信頼されているようで、齢50にして満足のいくバック・バンドを手にしたか~とちょっと涙・・・なーんて、04年にオール・トゥモローズ・パーティーズでザ・フォールを観た時も同様の感慨は抱いたので(あの時のバンドも、ハードボイルドで最高)、そのバンドすら昨年USツアー中に容赦なく解雇してみせたMESにとって、チームの安定だの継続なんていう「ロック会社」的タームは、さして大きな意味合いを持ってないんだろう。その時その時のザ・フォールにふさわしい音を出す連中を引っ張り込み、アイデアをフレッシュに保つこと――たとえば、最近のセットによく登場してきたI Can hear The Grass Grow(Fall Heads~収録。ザ・ムーヴのパスティーシュで、ポップなメロディだけに客受けがいい)がこの晩プレイされなかったのはちょっと意外だったが(曲がりなりにも会場のファイナル・ギグなんだから、他のバンドだったら「大団円的盛り上がり」を用意するだろう)、たとえ成功したアイデアであっても、フォーミュラ化する前にあっさり葬って次のステージに向かって進み出す、そのあり方はまさに転がり続ける石ではないかと思った。
セット・リストは、最新作およびThe Real New~以降の近作が中心・・・と知ったかぶりたいところだが、もともと聴き取りにくいMESの念仏ヴォーカルにギャンギャン喚きまくる単調な非音楽が被さって、メモを取る手も中途放棄。それでも音圧的に足りなかったらしく、Over! Over!~SpartaFCの強烈なソニック・アソルトの中ギター・アンプにつかつか歩み寄り、目盛りをぐりぐり~~っと最大音量にまでターン・アップする不良老人=MESの残虐ぶりには痺れました(運悪くスピーカーのどまん前に立ってたので、耳、マジちぎれそうでしたが。ノイバウテンかい?)。ダイヴでごっつい肉弾愛情表現を送る男ファン連中には目もくれず、自分の仕事を終えたらさっさと退場。ステージに這い上がり、「ハマースミス・パレ最後の夜だぞぉ~~!」とシャウトする男性客(警備員につまみ出されてました)がアンコール前に出没するハプニングもあったけど、MES本人は特に感慨を漏らすこともなく、ギグは約1時間で終了した。あのヴェニューに強い思い入れがない若造だから言えるのかもしれないが、特に感傷的なお別れライヴでもスペシャルでもない「Just Another Fine Fall Gig」だったからこそ逆にライフ・ゴーズ・オン!とポジティヴな気分になれたし、そういう終わり方があってもいいよな・・・と思いつつ、会場を後にしたのだった。
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