本国アメリカよりも、欧州での人気の方が高い気がするスパークルホース。壊れたはずのオルゴールが突如動き始め、子守唄を響かせる――そんな懐かしくも親しみやすいメロディをカタコト鳴らす繊細な音作りのバンド(と言っても、実質はマーク・リンカスのソロ・ユニットだが)だけにそれも不思議はないかもしれないが、彼らのATPデビュー・ギグはフェスだからといっていたずらに客受けを狙うこともない、アーティスティックな姿勢に貫かれたものだった。「静かなライヴなので、ラウドなのが好きな方はモグワイへどうぞ(苦笑)」とマーク自身冒頭で警告していたが、なるほどセッティングはキーボード、エフェクター、ギターのみで、ドラムは無し。選曲もファースト~セカンドからの楽曲が主体で(デンジャーマウスやデイヴ・フリッドマン参加の最新作「Dreamt For~」からは3曲のみ)、エレクトリックではあるものの微細な音が囁き合いながら、「Saturday」「Painbird」「Hundreds of Sparrows」など昔なじみの楽曲に「スパークルホース・アンプラグド」でも言いたい新しい表情とアレンジを付け加えていた。また、1曲ごとにアニメーションや実写などオリジナル・イメージ映像が後方スクリーンに映し出され、音と映像のハーモニーを生み出していく様も、映像喚起力豊かな彼らの音楽性にはぴったりだった。
それだけに、恐らく筆者のようにしつこく追ってきたファン以外には、ちょっと敷居の高いライヴだったのかな・・・とは思う。たとえば今年2月に彼らを観た時は、代表曲(といってもヒット・ソングなんて無いも同然のバンドなんですが)「Someday I Will Treat You Good」「Rainmaker」といったアップ・テンポ&ロッキンなポップ・チューンの存在が流れにメリハリを付けていたし、その時の5人編成=フル・バンドとはまったく異なる顔ぶれ(マーク+2名)だった今回は、ライヴ・エンターテインメントというより、むしろアート・インスタレーションのように作家性を感じさせるもの。その引いたパフォーマンスを、「食い足りない」「気取ってる」と見る人間もいたけれど、マーク・リンカスはライヴの間中ずっと、穏やかな微笑みを浮かべていた。昨年新作を発表するまでの5年間、この人は一時的に欝に見舞われ、スランプに陥っていたという。ひとつひとつの音を慈しむように演奏する姿が印象的だったこの日の姿は、トンネルを抜け出しつつある彼が、ミューズ(詩神)と再びチャンネルし始めた喜びを静かに噛み締めている――そんな風に、筆者の目にはちょっとまぶしく映った。
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