大概外れなしのライヴをブッキングしてくれるロンドンのインディ・プロモーターUpset The Rhythm!だが、この晩の出演ラインナップはアヴァンギャルド、インスト・ロック、NWポップ・・・と脈絡がなく音楽性もばらばら。いったい何が狙いなのか分からないパーティーみたいで、それが逆に面白かった。
アングラ人気を集めるエクスペリメンタル・パンク・バンドShimmy Rivers And And Canalは大所帯(サックス、キーボード、ハルモニウムまで使用)で、一見ギミック・アクトに思えたもののよく聴くとキャプテン・ビーフハートの自由さでポスト・パンクをプレイしているごときシャープな知性が感じられて、面白いバンドだった。痙攣気味の動きで暴れまわるヴォーカル、着ぐるみ姿のベーシスト(ブラッドハウンド・ギャングのビデオを思い出してしまった)と演奏はエネルギッシュだったし、盤でどこまでこのカオティックなプレイをまとめられるか聴いてみたいもの。
続くPivotはオーストラリア発の混成トリオ(メンバーのひとりはイギリス在住だそうで、遠距離通勤じゃのう)。セカンド・アルバム「O Soundtrack Of My Heart」を近々WARPから発表するインスト・ロッカーズで、このライヴの後マッシヴ・アタックがキュレートしたメルトダウン・フェスティヴァルではYMOの前座も務めている(シガー・ロスの豪ツアーでもサポートを担当)。WARPでインスト・ロック・・・と言えばバトルズが比較対象に上がるのは避けられないし、なるほど「EP」のストイシズムからの影響は濃い。ラップトップ+ギター/ベース/ドラムス/キーボードという編成も、その印象を強めている。しかし安易に「ポスト・バトルズ」バンドと片付けるのはかわいそう。メンバーは相当入れ替わったもののPivotそのものは90年代末から活動していたそうだし、ドラムスのローレンス・パイクは豪エレクトロ・ジャズの雄Trioskの一員でもあった。サウンドでもっとも近いところにいるのはむしろノルウェーのインスト・バンドSalvatore(あっちの方がクラウト・ロック度高めですけど)だと思ったし、彼ら同様ジョン・マッケンタイアがレコーディングを手掛たことからも分かるように、このバンドの背骨にあるのはハードコア~マス・ロックよりもむしろジャズ・フュージョンではないだろうか。
最新シングル「In The Blood」のキャッチーなリフ(ゲイリー・ニューマン風)が1曲目からバーストし始め、新作中心のセット・リスト&テンションの高い演奏にオーディエンスもぐいぐい引き付けられていく。グルーヴ重視のアプローチだけに踊れるし、どの曲にもいい意味でベタなポップ・フック――たとえば「シンクロニシティ」期ポリスとか80年代SF映画のサントラ(「Tron」とかね)――とドラマ性を備わっているので飽きさせない。楽器をスワップしつつの演奏は実にタイトで、3人のプレイヤビリティの高さも文句なし。ラップトップ奏者が加わって以降変化を重ね、やっと確立した自分達の音/パフォーマンスを生の場でプレゼンできる喜びをバンドも満喫しまくっている様子なのは好印象だった。とはいえちょっと生真面目すぎて一歩間違うとラッシュやヴァンゲリスに聞こえることもあるので(笑)、BulBulあたりの変態ミクスチャーなひらめきを足してくれたらもっとスリリングになるのでは?とも。真剣なバンドをつい茶化してしまう自分の性癖が呪わしいが、プログレやフュージョンがかつて「テク至上」と非難された時代があったことを思い返せば、そんなトラウマの欠如した若い子がネオ・プログレを「新しい~~」と興奮する姿についシニカルになってしまうのです。ウェザー・リポートを聴いてくれ!以上、年寄りのぼやき。
トリは待ってました!ホワイト・ウィリアムスちゃん。オハイオ出身のジョー・ウィリアムスを中核に据えるこのユニット、トーキング・ヘッズ、ディスコ、イーノ、リンジー・バッキンガム、アフロ・ビート、シルヴァー・アップルズ・・・と近年のUSインディのヒップなキーワードをすべて詰め込んだ昨年リリースの「Smoke」(→ジャケも最高)は旬なインドア・エレクトロ・ポップの快作だった。それだけに今回のUK上陸は相当期待していたのだが、1ヶ月ほど前にヴァンパイア・ウィークエンドの前座で観た時はあまりにダルで消極的な演奏にがっかり。VWにしか興味がないオーディエンス相手がやりにくいとしてもお客をエンタテインするのはパフォーマーの最低の礼儀だと思うし、それだけに今夜は個人的にはリターン・マッチだった。
で、結論を先に言うとそのやる気のなさ~スラッカーぶりはこの晩も同じ(ギャフン)。「New Violence」からスタートした演奏は、バンドとしての一体感が欠如したままいつの間にかサウンド・チェックにスライドしていった。この晩のライヴ、PAは劣悪だったのでそこは大目に見るとして「In The Club」のグラム&ビューティフルなT-レックス風グルーヴも空回りしていて寂しい。キーボードだけではなくピアニカも吹いたり小柄なジョーはかわいいしがんばっているのだが、バックの面々があまりにへなちょこ(ハッパの吸い過ぎじゃないの?)で見ているこちらもどこにフォーカスしていいのか、拠りどころが見つからない困った内容。後期ロキシー・ミュージックばりのエレな名曲「Headlines」でやっと火がついたかと思いきや、その勢いをポリリズムが麗しいハイライフ・チューン「Going Down」でも維持できないのはあまりに歯がゆい。全体の進行が押していたせいもあり、セットそのものも7曲で終了という物足りない展開であっけなく終わってしまった。
まあ、基本的にソロ・ユニット=ベッドルーム型宅録君なのであまり手厳しい注文をつけるのは早計だろう。ニューウェイヴの複合性と折衷にポップなメロディを融合させるセンス/嗅覚はバキバキに確かなので、そのヴィジョンを生で再現し増幅できるプレイヤーを探してほしい。その課題をきちんと済ませない限り、ホワイト・ウィリアムスは同じくインドアなリスナーかファッション・ピーポーにしか届かず終わってしまうだろうから。それは、余計なお世話かもしれないがもったいない。
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