先日行ったコンサートで、バンドのフロント・マンが「君達は一番賢いオーディエンスだよ!」と熱くMCしていた。観客のリアクションは良かったし、別に真剣に吐かれた言葉ではなく場のノリで出てきた盛り上げ台詞/謝辞だったんだろうが、このバンドのファンだからイコール賢いってこと?んな基準存在するのかいな?となんとも不思議に感じたものだった。素直に喜べばいいのかもしれないが、ミュージシャンごときに己れの知性をジャッジされるのは冗談じゃないってもんでしょう。
しかしこの日のレディオヘッドUKツアー初日=ロンドン公演を観に行ったオーディエンスは、「賢いね~」とステージから頭を撫で撫でされるまでもなくちょっとばかしの優越感を得たんじゃないかと思う。ツアーで生じるカーボン・フットプリントを極力抑えるべく、今回のツアーで低電力LED照明を使ったステージ演出・機材の削減・スタッフのマイボトル使用徹底を始め様々な工夫が凝らされているのは広く報じられている。会場のビクトリア・パークは公共交通機関のアクセスが良く、レディオヘッドが奨励する「会場に来るのに乗用車は使わないでください」もほぼ実践されたはずだし(ちなみに筆者は近所なので徒歩で行きました)、場内に多数ちらばる公式マーチャンタイズ売り場で売られていたバンドTも「再生ペット・ボトルから作られた繊維に有機コットンを混ぜて作ったものです」との但し書き付きでエコ。野外ビッグ・イベントに行く時生じる中流階級人ならではの罪悪感~ジレンマは、かなり軽減されるライヴだったと思う。かといって、場内で売られていたフード/ドリンク類がたとえば「オール有機栽培」「ヴェジタリアンのみ」なんて具合に厳しく制限されていたわけでもなく(プラスチック・カップのリサイクル・コーナーがある程度。それより容器を持参した客にビール値引きORキャッシュバックした方がよっぽど効果があると思うのだが・・・ゴミも減るでしょ?)、ドグマを振りかざすような押し付けがましさ・窮屈さは感じなかった。エンタテインメントとエシック(道徳)の狭間で、ぎりぎりの妥協点を探っているといったところか。
もちろん、その分のコストは主に観客が負担することになる。今回のチケット代は予約料+チケット送料も含め約50ポンド。昔に較べロンドンのライヴ・チケット代も全体的に上がったとはいえ――レディオヘッド様だとはいえ――かなりの額だと思う。たとえば、7年前にオックスフォードで開催された「レディヘ祭り」ことSouth Parkのチケットは27.50ポンド(手数料を含めても35ポンド以内だったはず)。3日間&宿舎付きのATPが現在1枚あたり150ポンド。前者はシガー・ロス、スーパーグラス、ベックと錚々たるオープニング・アクトを取り揃えていたし、後者は平均35~40アクトがブッキングされる。それに較べ今回のロンドン公演前座はバット・フォー・ラッシェズとDJのみで、しょぼすぎ。もっとマシなバンド見つけられなかったのかいな?!とキレそうになりました(前座はむしろ嫌われる日本だといまいちピンと来ない感覚かもしれないけど、イギリスではオープニング・アクトでいいバンドを観れると得した気分になるのが普通。これは、チケットの売り上げよりもどれだけ長時間客を引き止め酒を売れるかで会場側の稼ぎが左右されるイギリスの伝統だろう)。
というわけで「元を取った」感は正直薄いギグではあったが、そもそも「In Rainbows」が実質無料解放されたことを思い起こせば、ライヴのチャージをちょっとばかし高くしても(ライヴにまでちゃんと足を運ぶ)「借り」を感じているコア・ファンからさほど文句は出ないだろう・・・というバンドの読みもあったはず。頭がいい人達である。それに、オーガニック・フードにしろエコ商品にしろ、搾取やトリックなしに正しく作られたプロダクトが割高になるのは当たり前。先述したマーチャンにしても、Tシャツ20ポンドとお高めな設定だった。しかし、見えない代価(300円Tシャツの裏には低賃金で働かされる途上国の人々の汗が隠されていることもあるし、安いチケットの影には冠スポンサーのじゅうたん爆撃CMが控えていることもある)を無意識のうちに支払うか、懐は傷んだとしても正当な代価をあるべきところに支払うか――その選択肢が「It‘s All Up To You」とオーディエンスに委ねられたのはいいことだと思う。賢いオーディエンスになるのもならないのも、あなた次第。それは、ライヴを観に来ただけでバンドから「よくできました~」のハンコをもらうよりよっぽど気持ちがいいんじゃないだろうか。
「In Rainbows」以降のレディオヘッドの動向にはすべて「実験」という側面があると思っているのでつい周辺分析に夢中になってしまったが、肝心の本題=ライヴに移りましょー!セットは「IR」が中心で、「15Steps」(あのヒプノティックなビートでたちまち大歓声が上がる。抜群のオープニング曲ですな)からキック・オフした冒頭3曲は同作より。ステージ中央と両サイドにモニター・スクリーンが設置され、バンドの頭上に浮かぶ照明群はメインのライト(遠目にはパイプ・オルガンの管を12基並べたように見える)+5基の可動ライト+横断幕のような大ネオンで構成。スクリーン分割やレイザー光線も交えてのスペクタクルな演出は、音楽とシンクロして見事なパノラマを生み出していく。しかしバンドが本格的にグルーヴに乗り始めたのは、続く「The National Anthem」。メンバーの会話(「今日はいい天気だねー」etc)をコラージュ的に被せたイントロから始まったこの曲の不気味な低音とフリーキーなモダン・ジャズ風カオスの溶岩流はライヴでこそ活きるものだし、現レディオヘッドのダイナミックなサウンド・コンテクストともどんぴしゃだ。
「Pyramid Song」でブレイクを置き、「Nude」では穏やか&シンプルな中にも濃厚なバンド・ケミストリーがぐんぐん花開いていく。スロー・テンポのトラックでこれだけ聴かせきるバンドもなかなかいないだろう。「The Gloaming」のアブストラクトなアレンジ、「Dollars And Cents」の上昇感、「There There」後半インスト部のド迫力などバンドの圧倒的な力量を見せつける楽曲が続いたが、この晩最初の「場内全員総立ち」(ってか、立ち見だったんだけどね)が巻き起こったのはトムの「Are You Ready?」の掛け声から突入した「Just」のイントロ。90年代ファンも今のファンも繋ぐ名曲の名演に、大合唱の一体感が生まれる。パーカッシヴなエッジを強化し浮遊感を増した「Reckoner」の官能的かつ神秘的な響きは筆者にとってのハイライトだったが、その余韻に浸る間もなくトムの「Free Tibet!」の連呼から始まった(ステージ上のアンプにもチベット旗がかかっていた)「Everything In Its Right Place」(大胆なライヴでの解体ぶりが素晴らしい!)、そして「How To Dissapear~」と「KID A」2連発。目が覚めてもレモンの苦さは去らないし、自分はここにはいないんだ・・・と重く寒々としたネガな情感が身体を丸ごと包んでいく。闇も降りてきて、冷えが忍び寄ってきただけかもしれないが。
その氷を溶かすようだった「Videotape」のヒューマンなメロディに泣かされた後、「Airbag」の勇壮なイントロ(→オーディエンスも号泣)でラストに向かい疾走開始。ギターのハイ・エナジーなテンションがすさまじかった「Bangers+Mash」から最大の盛り上がりを生んだ怒涛の音塊「Planet Telex」へ畳み掛け、「今日は本当にビクビクしてたんだ、みんなありがとう」とのトムのMCにあたたかな喝采が送られた後、本編シメ=「The Tourist」のソウルフルな歌唱&スウィングするセレナーデで美しい幕切れになった。周囲は住宅地、しかもウィーク・デイということでヴィクトリア公園の閉園時間=10:30終演は厳守だったようだが、ギリギリまでアンコールに応じてくれたのはさすが。筆者にとっては「これを演ってくれないとなんだか気が済まない」曲である「You And Whose Army?」の歪んだユーモアとレディオヘッドの毒(この曲を聴くと、いつも背筋がひやっとする)をたっぷり含んだサンドイッチを満喫し、オーラスは「Idioteque」。感電系のシャープなビート包囲陣にライヴの終わりというよりこれから始まるようなリフレッシングな感覚を抱かされるほどだったこのエネルギッシュな楽曲、「氷河期が来る・・・」というコーラスを聴きながらまだこれからやることは山ほどあるんだな、と身が引き締まる思いだった。
今後ツアーを重ねることでセットは変化するだろうが、いわゆる「ベスト・ヒット」的内容を期待して足を運んだ向きには「Paranoid Android」も「My Iron Lung」も「Karma Poloce」もオミットされた今夜のセットは物足りないものだったのではないかと思う。逆に筆者のようにレディオヘッドにパーソナルな思い入れが薄い人間(とても好きなバンドだが、執着はありません)の方が、今夜のポスト「KID A」~新作中心の挑戦的なセットをエンジョイできたのかもしれない。スタジオ・アルバム7作を誇るアクトだけに「観に来た客を100%満足させる」内容など不可能に近いとはいえ(5時間プレイしてくれるってんなら話は別だが)、この5人でプレイできる純粋な喜び=ミュージシャンとしての興奮とオーディエンスとの邂逅/インタラクションをバンド側が目の前で全身で祝福してくれるのを観れれば、自分は満足だったりする。それくらい、プレイヤーとしての地力と誠意に満ちた説得力のあるバンドがレディオヘッドなのだ。
レディオヘッド新作後初フリー・ギグ(12時間マラソン:後編)
というわけで、やっとスタート地点に立てましたー。疲労と安堵の念、昂ぶる興奮が入り混じり実に妙な気分をBGM(=スペシャルズ)でじわじわ癒しつつ、次々入場してくる観客とステージを動き回るローディーを見守る。セット・リストがマイク脇に貼られ、「何曲書いてある?タイトルは知りたくないけど、何曲プレイするかだけ教えてくれ~」との後方のファンからの質問(通常のインストア・ギグのように3、4曲じゃないことを誰もが祈っていたんです)に、「10曲以上!15曲書いてある!」と最前列ファンが返してみんな相好を崩す。観客がすべて中に入ったところで、ほどなくして客電が落ち22:30過ぎにメンバー登場。ち、近!06年ハマースミス・アポロで観たライヴもレディオヘッドにしては小さい会場だったが(キャパ3000程度)、あの比ではない。彼ら自身、こんなクラブ~ライヴ・ハウスで演奏するのは100年ぶりじゃないだろうか?全員黒だの地味な服装なのに、コリンだけカラフルな80年代調Tシャツ(ワムTかと一瞬思った)で勘違いしたニュー・レイヴ野郎みたいなのが笑える。でも、よく見たらNO AGEのバンドTだったので許す。
観客から「ありがとう!」の声が矢継ぎ早に飛び、トム以下全員笑顔でポジションに立つ。とはいえ会場変更やサウンド・チェックのやり直しなど彼らにしてもストレスも多かったのだろう、演奏のキューが入るまで雰囲気は慎重でやや固い。「In Rainbows」曲をアルバム通りのシークエンスで演奏するはず・・・と察しはついていたが、1曲目はもちろん「15Step」。シャープ&パーカッシヴ、展開が抜群にドラマチックなこの曲はオープニングにもってこいで、前に出てきて手拍子を促すコリンにつられてお客もハンド・クラップ。力強いビートにフィルの力量を再確認しつつ、ギターが滑り込む鮮やかなブレイクで場内全体が気持ち良さそうに揺れ始める。音響がいつもいまいちの会場なので不安だったが、ナイジェル・ゴドリッチ本人がライヴのミキシングも仕切っているのだろう、ベースが時折りひずむ以外はどの音も実にクリアで盤の迫力と近さがしっかり再現されているのは脱帽。トムがギター(SG)を掴み、「Bodysnatchers」でスイッチが入る。屈強なリフを繰り出すジョニー、エド(素敵)のバンカラなプレイ、感電したように激しくシャウトするトムに向け観客が「It Is the 21st Century!」のコーラスを投げ返す。バンドも気分良さそうで、観ていてこっちも熱くなる。ダイナミックなプレイはもちろんロック・バンドの真髄でかっこいいけれど、「Nude」「All I Need」(深い&大合唱)などじっくり聴かせるバラッド曲も素晴らしかった。静かでミニマルな音(=爆音PAに頼らない、プレイヤーの地力で「間」も聴かせる楽曲)をライヴで精確に再現できるか否かはそのバンドの実力のバロメーターだといつも思っているけど、レディオヘッドは言うまでもなく一級。「Nude」はレゲエ~ダブなんだな。
にしても、「IR」の曲順/流れはライヴでもすごく映える。緩急の妙はもちろん、サウンドのトーンやビートの変化が自分の生理にすごくしっくりハマる。彼らが「IR」を楽曲単位ではなくアルバムとして聴いてほしいと願うのも無理はない、古典的なアルバム。男人気抜群(万国共通ですな)のジョニーの繊細なアルペジオに導かれ、「Weird Fishes/Arpeggi」。このイントロだけ10分プレイしてくれても自分的にはOK!と思えるくらいマジカルでヒプノティックなリフだ。エドもコーラスでがんばっていて(トムの美声にコーラス付けるのはプレッシャーだろうけど)、5人だけで「IR」をやろうとする、そのバンドとしてのプライド&人力を貫いてみせるところが彼らの魅力――というか、(ストリングスや子供合唱団を除き)バンドのパフォーマンスをありていにドキュメントした作品だった、ということなんだろう。演奏は既に水も漏らさぬタイトさだし、ビッグ・ステージに付き物の派手なライト・ショウやセットといった演出一切なしの今夜の〝ヌードな〟演奏はまるで彼らのスタジオに招かれてライヴを観ているよう。筆者にとってのハイライトは「Reckoner」(出だしでコリンがトチって、みんな失笑。リラックスした雰囲気が流れる)。ギター勢のミュートしたプレイはたまらなく美しいし、たとえば「Motion Picture Soundtrack」など彼らの楽曲にはたまに魂を吸い取られるような神がかった瞬間があるけど、この曲のさざなみのようにせり上がるミドルはまさにそれだ・・・ワープしました。「House Of Cards」のソウルフルなグルーヴに揺れた後、最新シングルだけに受けも良く一際ノリのいい「Jigsaw Falling Into Place」に突入。キャッチーなサビにお客は待ってましたとばかりに踊りまくりだし、バンドの勢い(コリンのノリノリぶりが強烈!基本的にクールなエドも、タンバリン片手にガウガウ吠えてる)も再びピークに。トムが一番好きな曲だと言っていた「Videotape」は、グリーンウッド兄弟がエフェクターを操る中、ミニ・キーボードの前にかがみこんだトムの独唱から静かにスタート。真冬の深夜に音もなく降り積もる雪が、なぜか脳裏に浮かんだ。
マナーのいいレディオヘッド・ファンだけに、「IR」全曲演奏以上の何かを求めてはいけない・・・という遠慮が働いたのか(?)、アンコールの声&喝采は割りと地味。しかし、長時間待ったファンに報いたいという思いもあったのだろう、トムがさらりと登場し、「今夜はもう(インストアどころじゃない)ライヴだから、もうちょっとやるよ」とアコギ1本で「Up On The Ladder」(嬉!)の弾き語りでアンコール開始。大喝采の中4人もステージに再び登場し、むむ、このキーボード・サウンドは間違いなく!「You And Who’s Army?」イントロだ。スパークルホースを思わせるこの曲は「Amnesiac」の中でも特に好きだし、ブラックな痙攣ユーモアを湛えたトムの演奏ぶりはいつ見ても笑える。コリンの怪物的なベース・ラインからいきなり押し寄せる「The National Anthem」に男客がうごぉぉ~~っ!と反応し(あのイントロで盛り上がらないのは嘘だ)、オーディエンスは再びダンス・ダンスの渦に突入。「My Iron Lung」「The Bends」のクラシック2連発で渦は更に加速、ジョニーのエネルギッシュなギター・ワークにキッズが陶酔&ジャンプ&「Where do we go from here?」大合唱の波を巻き起こし、この晩最大の盛り上がりが生まれた。ステージを去る前に、トムが前列のお客にめいっぱい腕を伸ばし可能な限りタッチ&握手していたのがとても微笑ましかった。
恐らく今回の一種のゲリラ・ギグはテスト・ケースで、アメリカや(願わくは)日本でも同様のライヴが行なわれるんじゃないかと思う。ロンドンのファンだけスペシャルな扱いを受けるのは、フェアではないから。もちろんそれをやるのは彼らのようにビッグなバンドにとって容易な話ではないし(一部の報道ではなんと1500人近いファンが集まったという)、騒音、クラウド・コントロール、治安面と様々なファクターが障害になってくる。ビートルズがアップルの屋上でライヴをやれた時代は、やはり遠い昔なのだ。しかし、1時間弱のライヴとはいえオーディエンスと直で接していこうという真摯な思いは十二分に伝わったし、小売店やレーベルを介さない「IR」ネット版リリース以降のレディオヘッドの新モード=intimacyを、口だけではなく身を持って実践したのはやはり評価に値する。今回の混乱を教訓に(苦笑)、次はぜひもうちょっと周到&念入りに準備して、世界のどこかでまたファンの手をじかに握ってほしい。00:12帰宅というわけで、長い1日が終わった。Special Thanks:Shoko&Sean
レディオヘッド、新作発表後初フリー・ギグ(12時間マラソン:前編)
「レディオヘッドが今日の夜ラフトレ・イーストでインストアをやるらしいよ」と友人から携帯メールが届いたのは11時過ぎのことだった。レーベルとしても有名なラフ・トレードだが、もとはレコード屋さん。ポートベローの本店はインディっ子のメッカとして有名だが、コベント・ガーデンにあった姉妹店が東ロンドンのトレンディなエリア=ブリック・レーンに移転、インディ小売ショップとしては恐らくイギリスで唯一の大スペース(アメリカには結構多いけど)を誇る旗艦店として再スタートを切ったのは昨年の話。以来インストア・ライヴも盛んにプロモートしてきたRTEだけに、レディオヘッドみたいなビッグ・バンドがまさか?!アルバム・リリース後初だよ!しかも無料?と半信半疑に感じつつ(ガセ情報はネット時代にありがちだし)、「イン・レインボウズ」で常識を打ち破った彼らのこと、こういうサプライズがあっても不思議はない(取材した際も、コリンが「もっとオーディエンスと直接近づいていきたい。ウェブキャストをやった理由もそれなんだ」と話していたし)。ウェブサイトをチェックしたところ夜8時開演/入場は先着順とのインフォがアップされている。うぉー本当じゃん!RTEは割りと自宅近所なので、とりあえず様子を見に行って運が良ければチケットなり整理券なりゲットできるかも・・・と、取るものも取り合えずぷらぷらブリック・レーンに向かったのだった(←これが最大の失敗)。
12:00 RTE到着
店の前の通りに待機エリアと柵が設置され(ショップは通常営業)、ハードコア・ファンが座り込んでいる。レディオヘッドだけにとっくの昔に100人くらい集まっているのでは?と思っていたが、数えたらまだ50人程度。先頭陣はこの寒さの中、朝10時に並び始めたという。RTEインストアのキャパは通常150くらいなので、これなら大丈夫そう。とりあえず行列に加わることにする。
12:30 What's Going On?
整理券はいつ配られる?リストバンドが配布されるのかな?と、集まった者同士で情報交換/予測。しかしよく見ると筆者のようにひとりで並んでいる人間は皆無で、他の連中はみんなチーム・ワークで食品・ドリンク調達~トイレ休憩を交互に行なっている。列の9割は男性ファンで、シックス・パックをがっつり持ち込んで既に飲み始めているではないか(羨ましい)。飲み食いは我慢できるけど、せめて雑誌なり暇つぶしできるものを持ってくれば良かった・・・
13:20 スクリーン
機材やスタッフが盛んに行き来。ウェブサイトによれば、入場できなかったファンのためにスクリーンとスピーカーを店の外に設置し少しでも多くの人間に観てもらえるようにするとのこと。でも、どこにスクリーンを置くんだろ? 75人。
14:00 飽きてきた
知人に携帯で状況をアップデートしつつ、ひたすら待つ。列はまだ100人未満で、RTEのスタッフが陣中見舞い(?)として店のディスカウント・フライヤーや缶バッジ、レディオヘッドのロゴが印刷されたハガキの入った袋を配布。「フリーCDでも入ってるのー?」と尋ねる若者に店員が苦笑いしている。
14:40 報道陣参入
後ろに並んでいた女性はBBCウェブサイトのスタッフ(&レディオヘッド・ファン)で、彼女によればバンドがインストアをやるのはなんと95年以来=12年ぶりとのこと。列の近所同志で連帯感が生まれていることもあり、みんなで「やったー!」「俺達見れるぞー!」と盛り上がる。にしても、BBCすらゲストでは入れないんだから驚き。先着順を徹底するつもりらしい。最初のTVクルーが到着。レポーターが女性ファンからコメントを取ろうとするものの、全員断っている(自分も断った)。レポーター「男ファンばっかだから、女の子のコメントが欲しいのに!(プンスカ)」
15:00 飽きた
列が通りの曲がり角を越え始める。そろそろ100人か。寒いし立ちっぱなしで疲れたし、何より飽きたよー。しかしレディオヘッド・ファンはみんな大人で礼儀正しく、関心させられた。列をちょっと抜けてコーヒーを買いに行っても、場所を確保していてくれる。割り込み野郎だの、夕方になって友人連中がぞろぞろ5人現れて列に加わる・・・なんてムカつく展開は少なくとも筆者は目撃しなかった。でも、ゴミ放置はいけません。モグワイのスチュアートにちょい似の男の子、ショルダーバッグにBIG ASKだのI LOVE WIND POWERだのエコなバッジ(笑)をべたべたくっつけていかにもレディオヘッドらしいけど、足元にはビール缶だの空き袋だのゴミ山積みで平気の平左(近くにゴミ箱あるじゃん)・・・。日本人の自分には永遠に理解できない感覚です。
15:10 店長
RTEの店長が、店の外で取材を受けている。インタヴュー&プロモもいいけど(店にとってこれほどの宣伝もないだろう)、待ってるファンにも何か言ってくれ~。しかしアナウンスが一向にないので、警備員に聞くと「5時に警察が来て、消防法や安全面をチェックした上で何人入場できるか決まる。7時には何か配れるはず」とのこと。あと4時間・・・。
15:20 ナイジェル・ゴドリッチ
が、休憩がてら外でお茶を飲んでいる。カメラもメモ帳も持たずに家を出たので、知人に頼んで家に寄ってピックアップしてもらうことにする。
16:00 ブランデー
前に立っていた女の子2人組からブランデーをおすそ分けしてもらい少しあったかくなる。が、まだ3時間近く待つのか・・・あくびが止まらない。2分おきに時計を眺めているくらい、時間が進まない。座りたいが、列を前に詰めろとしょっちゅう言われるので立つしかない。立ったまま寝る。
16:10 スクリーンはなし
RTEの入口はガラスのドアで、上方の窓にプラズマTVが4基設置されているのに気付く。普通の、20インチくらいのモニター。店内のテスト映像が映し出されていて、まさか、あれがいわゆる「スクリーンを店の外に設置」なの?とびっくり。てっきり、でかいライヴ用スクリーンを1基立てるんだと思ってた・・・仕事で行列に並べない友人が「中は無理でも外で観る!」と言っていたが、あのサイズじゃ何も見えないだろうから携帯にメールしてあげる。しばらくしてテレビがなくなり、スピーカーもいつの間にか撤収されてしまった。警察官がうろうろしている。
17:20 マジ飽きた
仕事を終えて(早引けして?)駆けつける連中が増えてきて、列も人ごみも混乱も大きくなっていく。6月ロンドン公演のチケットを既に買っている熱狂的なファンも多いが、一方で「通りかかって、面白そうだから列に加わった」という人も。自分は、彼らのライヴが好きなのはもちろん、日本のファンにこの模様をレポートするという使命感が一番大きいかなー。別に誰に頼まれたわけでもないけど。
17:50 リスト・バンド
やっと!リスト・バンドの配布開始。列に並んでいる人間ひとりひとりの腕にバンドが巻かれ、「友達のぶんも1本ちょうだい!」は通用しない。55番。
17:55
にしても、「RADIOHEA_D AT RT_E」と印刷された特製リスト・バンド、どう考えても事前から入念に仕込んであったわけで、だったらもっと早い時間から整理券なり配布することもできたはず。無料ライヴなので文句は言えないけど、要は〝10時間待つのも厭わないクレイジーなファンの行列&群集〟っていうメディアが泣いて喜ぶ「絵」を生み出したかったんじゃないの?ファンのためにフリー・ライヴを決行というのは素晴らしいアイデアだが、メディア・スタントの片棒を担がされるのは正直不快。そこまでシニカルなもんじゃないでしょ?「バンドの思惑を超えてファンが集まってしまった」のかもしれないけど、トムさん、自分達を見くびりすぎじゃないですか。昨年11月からプランニングしてたんなら、もっと何かできただろうRTE。
18:00 飛び去る時間
知人&デジカメ待ち。予定では19時開場なので、一気に焦りが出る。リスト・バンドは200本近く配ったそうだが、なるべくファンを中に入れるべく、場内が落ち着いたらリスト・バンドを持たないお客も少しずつ入れていく・・・と言う噂も浮上。
18:20 プチ・カオス
リスト・バンドが配布されたものの、外のスクリーンを期待して列の周辺でたむろすファンや、RTEの向かいのカフェ/バー/ショップ目当ての客(普段も夕方は賑わっている)、野次馬が終結して小さな通りはかなりの人だかり。将棋倒しや暴動といった物騒な雰囲気は皆無だったけど、どうすればいいのか分からなくてみんな途方に暮れている感じ。リスト・バンドはあっても、列を抜けて順番を失うわけにはいかないのでじっと我慢の子。デジカメが間に合わなかったら、最悪そのまま入場だ。RTEからのアナウンスはまだない。
19:15 デジカメ到着
うわーんありがとう!ということで、知人の尽力に感謝。この日最初のワインにやっとありつけた。長かった・・・にしても、いつ店内に入れるの?
19:30 会場変更
セキュリティ・スタッフがやって来て、「会場はRTEではなく93フィート・イースト(歩いて3分の場所にあるクラブ)に変更!スタートは9時きっかり!リスト・バンドを持ってる人しか入れないよ」と連呼。警察が治安面を憂慮し介入したことで、インストアは取りやめになったのだとか。っていうか、オーガナイズ不足で烏合の衆を生み出したらそうなるのも当然でしょう(音響が悪くて会場変更になったのでは?という噂もファンの間に広がったけど、その真偽は定かではない)・・・民族大移動。
19:40 お次は?
93フィート・イーストの中庭および外の通りが再びごった返す。っていうか、パラボラ・アンテナを据えたTVヴァンが既に外の通りに待機しているじゃないですか。明快な指示がないので、再び右往左往(入口が2ヶ所あるので、ファンが勝手に列を作っている)。警備員に追い返され、正面入口に賭けることに。急遽変更&指示待ちにイライラさせられつつも、リスト・バンドを確保できて余裕が生まれたファンの怒り/憤りはそれほどでもない。「ここまで待たされて、3、4曲しかプレイしなかったらお笑いだね」「それは暴動モンだろう」と待っている連中と軽口を叩き合う。
20:00 入場開始
「リスト・バンドがない人は入れないので帰りなさーい」と、スタッフと警官が群集に改めて呼びかける。会場変更の理由として、広いヴェニューに移してファンをもっと入れるというのがあったけど、そんなの嘘じゃん。もしかして入れるかも?と期待して待っていたファンが可哀相になる。
20:20 やっとこ
ドアが開き、1度に15人ずつ慎重に入場。フロアを横切り(まだ機材をセッティング中)裏手の中庭で待機させられることになったが、ライヴ会場の奥にあるラウンジ/バーにも既にファンが100人近く入っているではないか。あっちは酒も飲めるし座れてテレビも見れて、羨ましいよ~。たぶん、もうひとつの入り口からも客を入れたのだろう。むぐぐ。中庭は野放し状態で列も何もないので、とりあえず入口付近でひたすら待ち。気分は家畜。
21:00 ツアマネ氏?
ツアー・マネージャーと思しき人物「こっちもがんばってるけど、少なくともあと30分は待ってね」我々「・・・バンドがステージに出るのは22時過ぎだなこりゃ・・・」
21:10 バンド入り
中庭チームは寒空の下ぶるぶるしながら待っていたわけだけど、楽屋に近いのでナイジェル・ゴドリッチ他が廊下に姿を見せるたび、みんなで「ナイジェール!」とか声をかけて盛り上がる。と思ったら、メンバーが中庭奥の搬入口から会場入り!ほんの一瞬だったが、笑顔を浮かべ手を目一杯振るコリン、フードを被ったトムらの姿にみんな大感激&大歓声を送る。近くに立ってた男の子、既に半泣き。
21:30 VIP
パンピーの赤リスト・バンドに対し、青バンドを付けた人々が中に入っていきファンがブーイング。公式フォトグラファー(といっても3人程度ですんごく少ない)やレーベル関係者などVIPみたいだが、たぶん30人程度?まあ、ロンドンのギグの通常レベル(ゲスト・リストで入る業界人やコネ頼みの人がめちゃめちゃ多い)に較べれば全然マシ。
22:10 入場!
やっと入れる・・・1度に10人とこれまた慎重ながら、フロアに立ててみんな嬉しそう。会場のサイズは下北沢シェルターくらいで、近くに立ってた男の子が「手を伸ばせば触れる~~」とまた半泣き。しかし縦長の会場で見にくいのでなるべく前方へ。ステージを見上げるべく背骨を伸ばしたら、腰が相当痛いのに気付いた。〈後編に続く〉
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