Songs of Innocence
スウェーデン系ユダヤ人(といいつつ、NY、ベルリン、パリと拠点が散らばっているのでちと分かりにくいですが・・・)のデイヴィッド‐アイヴァー(Vo&G。たまにウクレレ)、アンドレ(Vo&G)、ネーマン(Ds)・ハーマン・デューン兄弟を中心とするユニット、ハーマン・デューン。セント・トーマスやジュリー・ドワイロンとのコラボはもちろん、キミヤ・ドーソン、ジェフリー・ルイスらブルックリンを拠点にするシンガー・ソングライター達とも交流が深いことからAnti Folkと称されることの多い彼らだが、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ダニエル・ジョンストン、ベル・アンド・セバスチャン、ダニエルソン・ファミリーらを彷彿させる無垢なメロディとクラシックなカントリー~フォークを踏襲した絶妙なストーリーテリング(侘しさや泣き笑いといった機微・ペーソスをさらりと描いていて、だからこそ時に「はっ」と胸を打たれることがある、そういう歌詞です)は、最新作「Giant」を小粒な、しかし何物にも代えがたいきらめきを放つ宝石のようなレコードにしている。昨年のAll Tomorrow’s Parties第2週で観て以来なので、ほぼ1年ぶり。結成時からのコア・メンバーで、ソングライティングの半数近くを手がけてきたアンドレが「Giant」レコーディング後(一時的に)離脱中・・・ということもあり、プレイにどう影響するだろう?と思ってもいたけれど、グルーヴィ&ボヘミアンなロックンロール・コンボとして、またハーモニー・グループとして(妹リサが可憐な声でハモってくれます)の抜群にナチュラルなフロウは健在でした。
本編と同じくらい楽しみにしていたのが、前座のターナー・コーディ。これまたブルックリンが拠点のSSWで、既にアルバムを6枚出している(過去5年の音源から編集されたコンピ「60 Seasons」がお勧め。ハーマン・デューンの面々もレコーディングによく手を貸しており、今回のツアーではHDのベース・プレイヤーも兼任)。スタイルとしては初期レナード・コーエンや「Nashville Skyline」あたりのディランを思わせる弾き語りなんだけど、カントリーをベースにした簡潔&クラシカルなソングライティングといい、そこはかとないユーモアを湛えた歌声といい、すべて・・・絶品!相当誉めすぎだが、このまま順調に歳を重ねていったら、もしかしてウィル・オールダムやビル・キャラハン並みに普遍的なソングライターになってくれるかもしれない。惚れたぜ! 声がいわゆるアメリカ~ンな「カントリー声」なので拒否反応が出る人もいるかもしれないが、何気にヒップスターだし(特に、イニシャル=TCをかたどったカスタム・メイドのごつい金のベルト・バックル。最高)、たとえばテキサス州からやってきたモノホンのカウボーイではなく、あくまで都会のカウボーイ詩人。モダンな古典を歌うトルバドールとして、これからも注目しようっと。
続いて始まったハーマン・デューンは、ソフトなアコースティック・サウンドでありながらグルーヴ感たっぷり、スウィートだけど一本芯の通ったチャーミングな音空間で場内を照らし、観客をぐいぐい魅了していった。演奏を引っ張る主役はデイヴィッド‐アイヴァーのジョナサン・リッチマンやビフ・ローズを思わせる飄々とした歌声の妙(この人の歌は、ほとんど名人芸ですな)――とはいえ、ドラムスに加えパーカッション・プレイヤーも参加しての小気味良い演奏は、これまででもっともポップ、かつ統一感のある作品=「Giant」に溢れるFUNを見事に再現。エレキのソロがかっこいいバンカラなロック・チューンも良かったけど、デイヴィッド‐アイヴァーの紡ぐ時に無邪気で時にちょっぴりハートブレイクな物語の数々は、リビング・ルームで演奏しているような親密さでフロアとステージを丁寧に架け橋していく。たとえばカウベルやトライアングルといったささやかなアクセントの響きまで愛しかったし、それこそステージから流れるすべての音を慈しみたくなるくらい、全身を耳にして音楽を味わう喜びを満喫した。派手でも豪華でもないけど、精神的にとても贅沢なライヴだったと思う。
隣に立っていた、まだティーンエイジャーと思しき初々しいカップル。ふたりともすごく素朴で可愛かったし、11時近くなって男の子の方がチラチラ腕時計をチェックしていたところからして、たぶん地方から観に来たんだろうと思う。ライヴの間中ずーっと手を握り合って、ほとんど言葉を交わすことなく演奏に見入っていた小さな恋人達。そのどこかいじらしい姿を見ていたら、I Wish That I Could See You Soonにこめられた「誰かを思う切ない気持ち」の純粋さが一気に胸に甦ってきて、ちょっと、泣けてしまいました・・・。
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