ぶっ壊せ!叫べ!明日なき爆発ファックト・アップ
会場(狭いパブの2階)に足を踏み入れるや、むぉ~~っとした熱気に気圧される。男・男・男、視界に入るのはほとんど若い男である。どのロック・ギグも基本的に男客は多いが、普段自分が行くギグ(=「インディ・ロック系」という括りになるんだろうか)とはかなり雰囲気が異なる客層で、シャレオツさは皆無ながら、場内はフレンドリーかつヘルシーな活気でみなぎっていて、すごくいい感じ。ハードコア・パンクという割りと閉じた世界は、そのぶん忠誠・団結心が強いのだろうか、(世界に点在する)シーンの中だけでアーティストもファンも回っている自足感があり、コマーシャル性のあるインディ・ロック~ポップに較べて「汚染」度が低いようだ。「やっぱロックだよねー」なんて言って、格好だけはいっぱしを気取ったファッション・ロッカーが(バンド/ファンの双方に)溢れ返る昨今のイギリスで、たとえば異性の目を意識したり見た目にこだわる様子もなく、また後方で腕組みしながら「観察」に終始するオタになるわけでもなく、純粋にライヴに参加しバンドを盛り立てに来ている彼らの姿は、とても清々しい。
リヴァプール出身のナイスなパンクス=DOWN+OUTが速射砲OIライヴ(曲はキャッチーだが、「ポスト・グリーン・デイ」パンクの軽さはゼロ)で盛り上げた後、いよいよこの晩のトリ、カナダ:トロント出身のファックト・アップが登場。2004年から活動しているこの5人組、ヴァイナルにこだわりが強いらしく長いこと7インチ(10枚)と12インチ(3枚)とシングルしかリリースしておらず、昨年米JADE TREEから満を持して初のフル・アルバム「HIDDEN WORLD」(アナログは2枚組!)を発表。ブラック・フラッグやネガティヴ・アプローチ直系のサウンドが「オールド・スクール・ハードコアの新たな旗手」と絶賛されているが、たとえばハスカー・ドゥのようにサイケの影響も感じさせる奥行きも備えているところが、実に個性的(アルバム・ジャケットなんて、インクレディブル・ストリングス・バンドとかホークウィンドみたいだもんな。すごくヘン)。本人達はザ・ストゥージズが一番好きだそうで、屈強なモーター・ベース(女性)+無頼なチェインソー・ギター(男性×2)が生む頭突きサウンドからもそれは大いに納得だが、一方で80年代グラスゴー・ノイジー・ポップ(=ヴァセリンス、ショップ・アシスタンツ、53rd&3rd他)にも目がない・・・そんなお茶目さんぶりは、楽曲のフックのはしばしにうかがえる。
今回のミニUKツアーでロンドン上陸は2度目(のはず)だが、熱心な固定ファンが既にしっかりついていて、ベス・ディットーといい勝負?なヴォーカルのカリスマPINK EYES(ポロシャツ、ジャージ)が巨体を現すや、着古したパンクT(ブラック・フラッグ、ディセンデンツなど)連中が「うおおお」とステージ前にはせ参じる。「2日前にギャロウズがライヴをやってたけど、今夜はあれ以上にしようぜ? オッケー?」とハッパをかけられ野郎共の興奮もみるみる膨張。ハード&タフにドライヴする雷サウンドがキック・オフし、自分の額をマイクでぼこぼこ殴打しつつPEが一気に咆哮のフル・チャージをかけてくる(ライヴが始まる前まで彼のおでこの灰色のしみはタトゥーかと思ってたが、同じ箇所を毎回連打しているようで、たちまち流血ぷしゅー・・・。プロレスラーみたいっす)。フロアは瞬時に腕と足が入り乱れるモッシュ鍋に早代わりし、ゴムまりみたいにはじき飛ばされてくる若者(身体を支えられない痩せたガキはモッシュに参加すんなよ:怒)のひじを顔面で受け止め、頭から降りかかるビールにぐしょぬれになり・・・と開始5分で早くも人間クッション状態、場内は完全ヒート・アップである。カオスの陣頭指揮をとるPEは、オーディエンスを煽るだけでなく自らダイヴしフロアのモッシュを混ぜ返し、ファンにタックルされたりマイクを奪われたりしながらカオスの温度を確実に上昇させていく。毛だらけの背中とお尻をぺろっと見せて笑いを誘うなどユーモア・センスもばっちりで、これだけカリスマと確信に満ちた痛快なフロント・マンを観たのは久々。惚れたぜ!
北米バンドの出す音には「こいつらいったい何食ってるんだ?」とよく仰天させられるが(肉と思いたいが、こういうバンドに限ってヴェジタリアンだったりするのよね)、チャラさゼロでがんがん叩きつける彼らのタフな音もその典型。無駄がなくソリッドなロックンロール、しかも基本はタテノリ・パンクとノリが良いので(終始ニコニコしていてかわいかった女性ベーシストによるニヒルなベース・ラインは、よく聴くとクラウト・ロック風。なにげに覚醒感があるので、ツイン・ギターの絡みと相まって頭がからっぽになっていくのが気持ちいいです)、爆音に解放された若い衆は暴れまくりの合唱しまくり。ヴォーカルは基本デス声:聴き取りほぼ不可能なのでよく合唱できるなあみんな・・・と感心しつつ(「CRUSADE」以外分かりませんでした、すんません修行足りないっすね)、ピュアなビート+リフのドライヴに興奮させられた自分も、いつしか「ぐおぉー」「アウゥゥ~~」とか、意味不明な叫び声でステージに向かって吠え返していた。筆者よりも小さな女の子も3人くらい、途中から「もーたまらん!」といった体でモッシュの中に特攻をかけていたし、酔っ払いの男にすんごい形相で肩を掴まれ、「これって何だ?新しいぞこれ!?」といきなり話しかけられたり、動物的な本能がむき出しにさせられるというか、理性はいったん脇に置いて音と動きに一体化できるファックト・アップのカタルシスは、無条件な喜びでオーディエンスのハートを掴んでいた。
約1時間のノンストップ・スピン・サイクルに心身ともにリフレッシュ&リチャージされ、汗だくでふらふらになりながら外に出たら、救急車が会場の外に止まっている。どうやら飲みすぎ・飛びすぎ・暴れすぎでぶっ倒れた若いオーディエンスが介護されていたようだが、それでも彼はきっと、とても幸せだったはずだ。
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