エイフェックス・ツインの「ウィンドウリッカー」のビデオ、あれを生で体験したらこんな気分?エグい乱舞を繰り広げるトランスヴェスタイトの一群に囲まれ、スーツ姿で意味不明のぼやきを吐き出す初老の男を眺めながらそう思った。ヴォン・スーデンフェッドのロンドン初ライヴ@ファブリックは、醜と美、怪物と理知といったエクストリーム=「水と油」な要素の数々が雑然と居並び、お互いを中和することなく拮抗するノイジーな様が最高にスリリングで刺激的な30分だった。
ヴォン・スーデンフェッドは、ザ・フォールの御大マーク・E・スミス(以下MES)と、マウス・オン・マーズのコラボ(04年)に端を発するプロジェクト。もともとクラウト・ロックやエレクトロ・アヴァンギャルドからの影響を強く受けてきたMESだけに、ドイツのストイックなピキピキ電気ネズミ達との相性は抜群で、初夏にリリースされたアルバム「Tromatic Reflexxoins」のシュール&ダーティなノイズ・ディスコ・サウンドは痛快そのもの。下手したら、今のザ・フォール以上にMESのダダ性~自動筆記型世界観を活かしきったユニットかもしれない。連夜若者が入口に行列を作るロンドンの大バコ人気クラブ:ファブリックは、「Fabric Live」などでもおなじみ。ハイソでもヒップでもアングラでもないが、ラウンジ・エリアだの吹き抜け空間だの、ロック・ヴェニューよりは明らかに小綺麗だし、こんなファッションでナンパなシチュエーションにまったくそぐわない文句オヤジ=MESが観れるだけでワクワクっす!約1年ぶりのファブリック詣でになる自分のことは思いっきり棚に上げると、ザ・フォール・ファンとしか思えない高齢の男性客やオタクなWIRE読者クン風情も、ヴォン・スーデンフェッドの登場まで所在なさげにドリンクを啜っていて笑えた。
この晩はエレクトロクラッシュやディスコ・パンク系アクトのライヴとDJが混じるいわゆる今風イベントで、ヴォン・スーデンフェッドが出演するROOM1(全部で3つある)でもジャスティスが流れた瞬間みんな超盛り上がっている。「ナザレス」がいまだにアンセムなんて、ちょっとびっくり。ステージ前ににじり寄ると、狭い舞台後方に設置されたラップトップ他機材のチェックをあわただしく終え、アンディとヤンが無言で演奏開始!無機質な(でもテンションは高い)ハンマー・ビートに乗ってステージ中央に躍り出たのはMES――ではなく、シングル「Fledermous Can’t Get It」のビデオでMESの口パクをやっていた、あのトランスヴェスタイトのお姉様達3人!シフォン・ドレスにスーパー・ボディコンなマイクロ・ミニ(パンツ穿いてないでしょ、あれは)、下着風ボディ・スーツと全員超デカダンで、10センチ以上のヒールが長身のモデル体型をいっそう際立たせている。ラップ・ダンサーばりにセクシーな腰つきで闊歩する姿は艶かしく、ハイ・キックを華麗に決める足も綺麗すぎ。ぐぐぐ、己の大根足が恨めしい!しかしどぎつい化粧にも関らずヒゲもヒゲの青い剃り跡もそのままで、胸毛もご~っつくキープ。男性客の多くは、彼(女)らの股間エリアをこっそり凝視しつつ「マスキュリンなフェミニティ」という滅多にお目にかかれないフリーク・ショウに思いっきり引いているけど(笑)、ファクトリーとリー・バワリーが一緒くたになったような美しい悪夢世界にうっとり・・・なんて浸っていたら、待ってました!MESが歌詞カンペ(というかA4紙)を手にいつものごとくぶっきらぼうに登場。迎える客のやんやの歓声も拍手も完全無視で、「Flooded」「Speech Contamination」などをヤスリのような声でまくしたて吠え、かと思えば突如口をもぐもぐさせるだけの酔っ払ったオヤジ状態に突入したり、まったく目が離せない謎のアクション/壁を明いてに歌うような平熱のデス・コミュニケーションぶりが、あぅ~んラヴリー☆ その傍らでトラニー3人娘の猥雑な踊りはエスカレートする一方で、抽象に徹するMESという屈強なノイズにド迫力の肉体性と美醜のカクテル弾で応酬。すさまじいミスマッチだが、どこに置いても結局違和感の塊こそMESなので、これくらい強烈なコントラストの方が逆に超越していて盛り上がる。
ザ・フォールを音圧だけにストリップ・ダウンしたごときヴォン・スーデンフェッドのサディスティックな音がとても気に入っているのだろう、MESもたまに笑顔(顔をしかめているようにしか見えないが)を浮かべていた。ラストのテクノ・パンク「Fledermaus~」でオーディエンスもの興奮はピークに達したが、アンコールもMCもなしで唐突にブツッと終わる幕切れもめちゃかっこいい。最後になったが、黒子に徹したマウス・オン・マーズのプレイは特筆もの。音をダイナミックに引き裂きよじり、ビートを潰し・・・と、終始エネルギッシュな全身プレイ。人間の奥深いところを逆撫でする人間酸=MES効果が、彼らにあの悲鳴のような演奏をさせたのかもしれない(でも、1週間後に観たマウス・オン・マーズとしてのライヴもすさまじくパワフルだったんで現在の彼らはロックなモードなのかも?)。トラウマになるか、あるいはギグ・オブ・ザ・イヤーになるか――神経と耐性の踏み絵になりかねないこのライヴ、ぜひ日本にも来襲を!
ヴォン・スーデンフェッド「トロマティック・リフレクションズを脱兎ゲット!
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