昨秋ヴァンパイア・ウィークエンドのオープニング・アクトで初めて観て、前知識ゼロにも拘らずすっかり気に入ってしまったケント出身の4人組イット・ハグス・バック(It Hugs Back。不思議なバンド名ですね)。音楽プレイしている時だけまともに顔を上げていられるんじゃないか・・・?と余計な心配をしたくなるほどシャイな子達だし、サウンドも実に繊細かつ緻密に組み立てている。しかし余計なアティテュードだのはったりだのファッション性などは皆無で、音で雄弁に語っているところがとても好き。清々しいです。
ステージ中央でメロディックなべースをソフトに操るポール、ブラシからスティックまで多彩なビート・メイクでメリハリをつけていくディミトリ、巻き毛にエイロス・チャイルズをちょっと彷彿させるオルガンのジャック(エイチャのあのクレイジーな弾き方ではなく、見た目だけですけど)・・・と全員達者なプレイヤーなんだけど、このバンドの要はやはりギター/シンガーのマシューではないかと思う。〝グランジ化したウィリー・メイソン〟とでも呼びたい長髪(左利き!)の彼は、アコギの麗しいカッティングからディストーションの効いたエレクトリック・ジャムまで自在に弾きこなしながら浮遊感あふれるウィスパリング・ヴォイスで全体をまとめ引っ張っていく(7曲程度と短いセットだったのに、ギター3本使い分ける凝り性なところもいいですね)。バンド結成は06年というけど、この子のギター・プレイの自然さは天性のものだろうな。
前回観た時は「Electr-O-Pura」~「I Can Hear The Heart…」期ヨ・ラ・テンゴ、あるいはサードまでのベル・アンド・セバスチャンを思わせるリリカルなフォーキィ・メロディが瑞々しいバンドという印象が強かったが、この日のライヴはパワー・ポップ風のはっちゃけた疾走曲からネオゲイザーの若々しい激しさ、ドリーミィなオルガンの霧とラウド・ギターが交互に浮かび上がるサイケデリックなトーンまで、彼らの持ち技の数々を味わうことができて得した気分。しかしどの曲もアレンジのセンスが良く、個別に耳を傾けているとリズムやベース・ラインは実に複雑なのに(特にドラムはジャズの影響大と見た)トータルで聴くとそれぞれの音がハーモナイズしていて、クリアなフォルムが残っていくのが心地よい。ソングライティング、編曲のこだわり、バンド・ケミストリーの醸成・・・と言ったミュージシャンなら当たり前のことを誠実にやっているだけのバンドなのかもしれないけど、その基本をすっ飛ばす連中が多い昨今、イット・ハグス・バックの当たり前さときめ細かい職人ぶりに涙してしまうのかもしれない。
ジェントル・ポップの名曲「Carefully」をプレイしてくれなかったのはちょっと残念だったけど、自主制作シングルに続きToo Pure(最近ではフューチャー・オブ・ザ・レフトでおなじみ)と契約を交わした彼らがデビュー・アルバムをどんな風にまとめてくれるか、楽しみに待とうと思う。
続いて登場したのは、ザ・フューチャーヘッズやマキシモ・パークと並ぶ「サンダーランド三羽烏」にしてギーク・ポップの名手フィールド・ミュージックのデイヴィッド・ブルウスによる新ユニット、スクール・オブ・ランゲージ。現在メンバー3人は高い評価を得たセカンド「Tones Of Town」(07年)リリース後バンドとしての活動をいったん休止、それぞれ分派してソロ活動を推し進めているそうだが、SoLはその第一弾になる。ビーチ・ボーイズのコーラス、変拍子への愛情とバロック・ポップな音作り・・・等をミックスしチャーミングかつインテリジェントなトウィステッド・メロディを編み上げてみせたフィールド・ミュージックが好きな方ならSoLも即気に入ると思うが、こちらはフィールド・ミュージックの(いい意味での)律儀さ=作りこみっぷりから解放された感がある(恐らくフィールド・ミュージックの面々は全員ポップ識者なのだろうし、それぞれの意見を等分に盛り込んでいたらやや閉所恐怖症的にもなるってもんだろう。しかも兄弟を含むバンドだし)。
その伸びやかさは、ひとつにはこのライヴが純然たるソロ・パフォーマンスだったからというのもあったと思う。バック・バンドを連れてくるかと思いきや、意外やセミアコ1本の弾き語り(デビュー・アルバム「Sea From Shore」もほぼひとりで作った模様)。ファースト・シングル「Rockist Single」( MySpaceで試聴可)で聴かせるマルチ・レイヤーな音作り~サンプリング/ラップトップ・ワークの妙といった細かい技はそれゆえ堪能できずじまいだったものの、シンプルな70年代的ギター・サウンドで何気にエキセントリックなフックに満ちたメロディ(弾き語りでもこの人にフォーク・シンガー臭は皆無)を伸びやかに歌う様にはブライアン・イーノやジム・オルーク(「Insignificance」の頃ね)への憧憬が浮かんでくるようだったし、ロキシー・ミュージックの名曲「If There’s Something」をギター1本でカヴァーするある意味無謀なセンスもナイス!ナチュラルによじれた癖になるポップネス、アルバムがこれまた楽しみな人です。ちなみに、アメリカではスリル・ジョッキーからリリース。
このギグは、イギリス発のナイスな音楽ウェブジンDrowned In Sound(近頃のNMEよりよっぽど読むところがある&レーベルとしてもがんばってます)が企画した「08年注目の新人さんいらっしゃ~い」新年シリーズ・ライヴの一環で、実はメイン・アクトは奇天烈アート・ロッカー=ワイルド・ビースツ(アルバムももうすぐ出ます)。とても見せるライヴをやる人達(演奏が上手い&ヴォーカルのヨーデル声も抜群に面白い)なので観たかったけれど、風邪の治りかけで体調が妖しくなってきて彼らの登場前に退却することに。そしたら筆者と入れ替わりで、フランツ・フェルディナンドのアレックス、その後ニックが会場に入っていくのを目撃。レーベル・メイトをチェックしに来たみたいですね(グラスゴーでレコーディングしているとばかり思ってたのでびっくりした)・・・でも、フランツの面々はきっと好きだろうなあWBみたいなバンド。常日頃不当なほどに(?)UKバンドに対して点が辛くなってしまう自分ではあるけれど、探せばいいアクトはこうやって見つかるもの。もっと努力しないとね。
スクール・オブ・ランゲージ「Sea From Shore」を脱兎ゲット!
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