やはり今もっともスリリング&ブリリアントなライヴ・アクトのひとつだな――久々にアニマル・コレクティヴのギグを体験して、改めての感動と感服!のため息が思わず漏れたのだった。この日のロンドン公演は、エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイがキュレートしたAll Tomorrow‘s Parties出演後のいわば「お母さん、お代わり~!」ライヴ(ATP出演前後にこうして単独公演がブッキングされるケースは多い)。EITSの回に行けなかったこちらとしてはありがたい限りだったし、前座はアトランタの危険分子(笑)、ディアハンターのブラッドフォード・コックスによる4トラック単独飛行=アトラス・サウンド・・・というわけで、一粒で二度美味しいショウでした。
ピッチフォークATPの際に本家ディアハンターのライヴを初体験したばかりだったが、あちらがフル・バンドでネオゲイザーからサイケデリックな覚醒までエクスタティック(かつ時にブルータル)な爆風を巻き起こしたのに較べ、アトラス・サウンドはギター/ループ/サンプラーを駆使してのミニマルかつ繊細なセット。アート・パンクの「武装」を解除したこちらの方が、基本的に歌もの好きな筆者の感性にはハマりました。とはいえサウンドに関してはディアハンターの最新作「Cryptograms」と共通点も当然多く、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン「Loveless」の甘くひんやりしたシャーベットの陶酔感をエンドレスにループするごときサウンド・スケープは、さながら夢の子宮へのゆるやかな落下。ポポル・ヴー、タンジェリン・ドリーム、ブライアン・イーノらアンビエント・ミュージックの影響をモダンに消化したとも言える音像(=レーベル・メイトのホワイト・レインボーにも通じるドリーム・ロック味)に揺られつつ、しかしメロディそのものは意外にもクラシックなロックンロールやスタンダード、ブルースなど、アメリカン・ロックの系譜を感じさせるのがユニーク。グリズリー・ベアがもっとエレクトリック寄りになったら、こんな音楽を奏でるのかもしれない。ブラッドフォード・コックスの作る音楽には常々「子供のまま大きくなってしまった青年」のイノセンスと潔癖な残酷さの双方を感じるけれど、ぶかぶかのTシャツ(この人の痩せ方は病気のせいなんですが)身にまとい長~い身体を窮屈そうに折り曲げながらギターやアンプをあれこれいじるどこか微笑ましい様を見ていたら、彼はもしかしたらベッドルームから出ることを拒絶した「ガラスの中の青年」なのかもしれないな・・・なんて思った。ちなみに、昨年出た「Let The Blind Lead~」Kranky盤にボーナス・ディスクを加えアート・ワークも新装したナイスなリパッケージ再発が4ADから出てますので、そちらもよろしく。
続いて真打=アニマル・コレクティヴの登場。アトラス・サウンドの時点ではまだ隙間が目立ったフロアも、いい感じで埋まっている。熱心なファンは昔からフォローしまた大いにリスペクトされているバンドだけれど、目下の最新アルバム「Strawberry Jam」およびパンダ・ベアーの美ソロ「Person Pitch」アンダーグラウンド・ヒットでイギリスでもやっと人気が本格化したようだ。その「Strawberry~」リリース直前ギグを昨年観て以来・・・というわけで約1年ぶりの再会だったが、今回も同じく3人編成(エイヴィー、パンダ・ベアー、ジェオロジスト)という点を除くときらびやかな照明スタンドをステージ後方に設置したステージングはぐっと派手になった観。バキバキにパワフルなライティングに最初驚かされたものの、3曲目「Peacebones」あたりでアッパーな演奏とシンクロし始め、ノンストップに拍車がかかる一方の奇妙な音とビート、光の洪水に飲み込まれる。ドルビー・サラウンド・システム装備のシアターで総天然色スペクタクル映画を観るようなトランシーな興奮に、脳内アドレナリンも一気に全開っす。うーん、幸せ。
機材を載せたテーブルを前に3人も汗だくでグルーヴに乗り踊り演奏し・・・と奮闘していて、去年のソロ・ギグがラップトップ・オンリーでかなりダルだったパンダ・ベアー(アルバムが良すぎたのでこちらも過剰に期待したのが悪かったのだろうが)株も持ち直したし、休みなく動き回るジェオロジストのヘッド・ライト、エイヴィーのエネルギッシュなアクションにオーディエンスも歓声を上げている。圧巻は「Strawberry~」のユーフォリックなベスト・トラック「Fireworks」の激長尺ジャムで(たぶんトータルで20分近くプレイしていたと思う)、合間に「Essplode」を挟みクライマックスを二度刻むダイナミックな展開には完全にKOされた。
たまたま翌日取材した某ミュージシャンも彼らを「ライヴで新曲ばっかりプレイするバンドだよね」と形容していたように、この晩もセット・リストの大半は未発表の新曲だった。知らない曲ばかりだとどんなバンドのライヴでも集中力が持続しなくなってくるものだが、アニマル・コレクティヴに関してはそれがまったく通用しない。それはたぶん彼らが歌や言葉につきものの意味性/思考の枠組みから逸脱し、音楽をリズム・音・光・色彩といったエレメントにまで大胆に解放~感覚にダイレクトにアピールする抽象のコンポジションへとリアレンジしているからだと思う。解釈せず、感じること。音の印象派とでもいうべきそのモダニスト精神は、これからもリスナーをあっと言わせるフレッシュな刺激をもたらし続けるに違いない。
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