※誤解を招くタイトルなので最初に断っておくと、ダニエル・ジョンストンとバットホール・サーファーズが同じビルだったわけではなく(テキサスでビルをシェアしたこともあったそうだが)、たまたま同じ日にダニエルのインストア・ギグとバットホールのロンドン公演があったという意味です、悪しからず。
というわけで別々に書いてもいいんだけど、ダニエル・ジョンストンのライヴは何せ短かった・・・。ここのところインストアに力を入れているラフ・トレード・イーストで急遽決まったこのライヴ、前日のプロパーな公演を見逃していたので(観に行った知人によればガラガラだったそうで、プロモーション不足だったみたい)ラッキー!と早起きし、リストバンドをもらいに行く。ダニエルももちろんだが、このツアーに帯同しているマーク・リンカス(スパークルホース)とYLTのジェイムスを観たかった、というのが本音。しかしそんな邪心が災いしたのか(?)、今回のツアーに参加していたスカウト・ニブレットの紹介MCに続き登場したのはダニエルのみ。このインストアの後にラジオ録音が控えていたそうで、他のメンバーは既にBBCに移動していたらしい。
一瞬しょぼーんとしたが気を取り直し、ギターをかきむしるダニエルのいつものように一生懸命で素朴な歌いっぷりと不気味ですらあるジョークに耳を傾けた・・・んだけど、2曲でさくっと退場してしまいステージを取り囲んだお客もさすがに騒然。アンコールの拍手に応え「プロフェッショナルじゃなかったねー」とややバツが悪そうに戻ってきたものの、再び2曲――シメは前回観た時と同じ「Devil Town」――歌って手を振りながら去ってしまった。それもダニエル・ジョンストン、ということ。オーディエンスが去った後、本人はアナログ盤コーナーを物色したりしていて元気そうなので良かったな。
日が落ちて、お次はバットホール・サーファーズ。なんか、このバンド名を連呼するだけでも気持ちいいですね。とはいえ93年はもちろん02年のフジも観ていないので、筆者は初体験(彼らを最初に知ったのは「Double Live」が出た頃なんだけど、大ファンの親友に自慢げにあのジャケットを見せられ瞬時にトラウマになったのは今も忘れない)。今回の久々の米欧ツアー、ギビー、ポール、キング・コフィー、テレザ、ジェフの89年以来という「クラシック・ラインナップ」が揃ったこともあり(新作リリースがあるわけでもなんでもないのに)各地で大盛況だった。達者な腕前で前座からサポートまで務めたのがThe Paul Green School of Rockというアメリカのロック学校の生徒達(8~18歳が対象らしい)で、公演のチラシには<Butthole Surfers With The Paul Green School of Rock All-Stars>とクレジットされていた。しかし「SoRの子供達はクラシック・ロックのカヴァーばっかりやっててつまらん、カラオケか?」という目撃談を事前にキャッチしていたので、バットホール登場まで同行した知人&その友人達と会場近くのパブで時間を潰すことにする(暑い日だったので、冷房がダメなフォーラムで長時間待つ自信もないっす)。彼らの多くは遠路はるばるロンドンまで駆けつけたハードコアなファンで、中にはマンチェスター他UK公演をほぼすべて観に行ったというツワモノも混じっていて「今も最高のバンドだぁ~!やっぱベストだよ」と絶賛。もちろん全盛期の彼らもばっちり観ているそうで、すごいっすねえーと話を聞きながら感心していたのだが、こちら同様時間潰ししている他のファンの群れに目をやると、その9割が男/主流は30~40代・・・。「ギビーかわいい★」とか言ってる間は、自分は若くかわいいインディ・ボーイズなんかに一生縁がないのだろうな。あーあ。
9時近くになり、場内へGO。人いきれでむんむんしているが、女性客もたまに混じっていてちょっとほっとする。しかし客層の80%は普段自分が行くようなライヴでお目にかからないタイプの人々で、強面のスキンズ・オヤジ(もちろん袖なしGジャンで、久々に再会したと思しき友達と「おー元気か!」と嬉しそうにハイ・ファイヴしたりしてるのが微笑ましい)とか年季の入ったゴス、ドレッドのヒッピー/トラヴェラー、ボンデージに顔ピアスと気合の入ったパンク・カップル、オタクっぽい兄ちゃんなど、要するに世ののけ者とハミ出し者達の饗(狂)宴状態(バットホールTシャツの次に着用率が高かったのが、デッド・ケネディーズとNIN)。写真を撮るべく冒頭だけ前の方に行こうかな・・・と考えてもいたけど、何が起きるか分からないのでやめた。
メンバーが登場し、場内がすさまじい歓声で満たされる。1曲目から「Locust Abortion」の「22Going On 23」が爆発し、ヘヴィでトライバルなツイン・ドラムの悪魔的グルーヴとテープ、ノイズのトルネードに場が一気に盛り上がる。選曲は80年代後半~90年代頭=「Abortion」「Hairway」が中心で、さすがにシンバル放火やヌード・ダンサーとまではいかなかったものの(笑)スクリーン映像・ストロボ・スモーク・・・とかつてフレーミング・リップスに影響を与えたとも言われるカオティックなステージングと音のミックスは強烈で、ザッパとオジーとPiLとZZトップが乱交しているごときスラッジ・サウンドにまみれるうち自分が脱力しているのか金縛りに合って苦しんでいるのか分からなくなってくる。
ロック・スクールのキッズ達がギター、ドラムと入れ替わり立ち替わり参加し、サックス、クワイア、メガフォンとパワー・アップ&エスカレートしていく音に合わせ、バックの映像もエログロ/ナンセンスを容赦なく連打していく。曲に合わせて「スヌーピー」映像をリミックスするあたりまでは普通に見ていられたが、ハードコア・ポルノ雑誌のコラージュ、痛すぎます!な割礼儀式、出産映像、なぶり殺しに合う闘牛etc、とダークなクリップが続くのにはマジ気持ち悪くなってきた。しかしステージ上のバットホールの面々はプロフェッショナルに演奏に集中していて、眼鏡+Tシャツとあまりに普通だったギビーの佇まいに至っては、むしろ教師とか科学者に近い雰囲気(マイクの脇に金属ケースを置き、中のサンプラーをいじる様もそれっぽい。SoRの無邪気な子供達がわらわらギビーを囲み真剣に演奏する姿はさながら「ハメルンの笛吹き」?)。物騒な音といいPTAが激怒しそうな映像といい一見アナーキーを煽り暴動を教唆するようにも思えるが、実はそうした異様な状況下で人間と良識がどう反応するかを冷静に見ているバンドなのだろう。このサド侯爵的世界観~いわば精神的な浣腸を笑い飛ばしエンジョイするには、①鋭利でタフな知性②消化能力の高い屈強な胃袋のふたつが必要かもしれない。このツアーの成功後12月のAll Tomorrow‘s Parties(メルヴィンスとマイク・パットンが仕切り役)出演もアナウンスされたし、①②を鍛えてリターン・マッチに臨みたい・・・そしたら何か別の世界が見えてくるかも・・・?(でも、できれば子供達は抜きでお願いします)なーんて夢想してしまうほど、「Sweet Loaf」(ダイヴも続出!)と「X-Ray」が登場した後半、サイケデリック・モンスターの俗名に恥じない超ヘヴィでカタルシスな音は文句なしにかっこ良かった。
奇っ怪なトリップを終え会場を出たら、くだんのハードコアなバットホール追っかけである知人がもう柵の外に立っていてびっくりさせられた。なんでも入場の行列に並んでいる間に我慢できなくなってその場で立ちション(おいおい!笑)していたところを警備員に見咎められ、中に入れてもらえなかったという。バンドもすごいが、ファンもとんでもない。それでもまったくへこたれることなく、アフターショウ・パーティーに忍び込もうと奔走する根性には脱帽。彼はただただ、ギビーとビールを飲みたかったんだろうな。
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