This Band Could Be Your Life
うわーお。あんぐり開いた口がやがて笑顔に変わり、興奮と涙、汗と歓喜を越え、最後にピュアな感動の大河へ解放されるような、熱く深く、充実したライヴだった。デス・キャブ・フォー・キューティーを観るのはこれで6度目だが、その中でもベストの内容。デビューから10年以上のキャリアの厚みと同時にフレッシュなイノベーションの輝きも兼ね備えたこのバンドは、今もっとも脂の乗ったライヴをやっている。
今回のライヴはメンバー自身「これまでよりダーク」と形容する新作「Narrow Stairs」発売直前スペシャル・ギグ。既に公開済みのファースト・シングル「I Will Possess Your Heart」が絶品名曲なだけに期待も募るばかりだったし、嬉しいことに(既にロンドンでは5000人収容の大会場を体験済みにも拘らず)この日の会場はキャパ1000と比較的小さめ。行くしかないっしょ!というわけで筆者もアナウンスと同時に慌ててチケットをゲットしたのだが、本国アメリカほどではないもののイギリスでも熱心な固定ファンが多いバンドだけにもちろんソールド・アウト。開場待ちの列を眺めるとその多くがティーンエイジャーのファンで(時間つぶしにNMEを読んでるキッズも結構多い。いまどきNMEを買ってる若者がいるのか!とちょっと驚かされました)、アメリカのファン・ベースとあまり変わらない。The O.C効果はやはり絶大だったんですね。前座のクリアレイクは、確か初期にシューゲイザー的ロマンチック・ポップを奏でていたんじゃなかったっけ・・・と記憶を辿りながら聴いていたのだが、プログレ・バンドがヘヴィなガレージ・ロックをプレイしているような演奏といい平坦でひらめきに欠ける曲といい、何がやりたいのか最後までよく分からなかったというのが率直な感想。音が割れっぱなしと会場PAも劣悪だっただけにニュアンスをちゃんと聴き取れなかったとはいえ、「アルバム・レコーディング費用を捻出したいので今度出るシングルをぜひ買ってね」というヴォーカル氏の嘆願に協力する気は、残念ながら起きませんでした。ふと見るとDCFCのクリスが彼らの演奏をステージ脇で熱心に見守っていて、やっぱり彼は「バンド」を観るのが根っから好きなのねと感じる。
5、6年前と違って最近はさすがにバンド自らではなくセッティングにローディーを使うようになったDCFCだが(やはりそこはメジャー所属ならでは?)、ドラムスを調整するためステージに登場したジェイソンに向けて男性ファンから歓声が起こるのは嬉しい。女性ファンも増えたけど、基本的に男に人気があるバンドなんだよね。ベンとクリスのポジションにごっつい数のペダル/エフェクター盤やキーボードが積まれていき、いよいよ客電が落ちたのは9時ちょっと過ぎ。髪が伸びてもみあげも板についてきたベンはチェックのシャツ姿で、CCRのジョン・フォガティにちょっと似てきたのが素敵。クリスはいつものようにサラ髪で涼しげないでたちで、IEMびしっと装着&ヒゲで精悍さを増したニックとは対照的だ。そのニックとジェイソンのがんばりが筆者にとっての今夜の見所のひとつだった――のは、「Narrow~」がグルーヴ重視のロック作になっているから。その期待に違わず、同作の冒頭を飾るパノラミックなロッカ・バラード「Bixby Canyon Bridge」からスタートしたライヴはしょっぱなからワイドな音場が生まれ圧倒される。ベンの歌い上げヴォーカルもひたすらエモいし、ガガガガ・ガガガガ!と刻むように盛り上がっていくミドルの迫力といい各サウンドがもつれあい火花を散らすアウトロといい・・・申し分なし!惚れ直したぜ!と唸っているところに畳み掛けてきたのは「The New Year」のドラマチックな必殺イントロだ~~っ(爆死)。これが本格的なキューになり「待ってました」の狂喜乱舞がバースト、勇壮なドラム・ビートに合わせフロアが揺れる。ニックはドラム・キットに突貫しかねない勢いで全身で弾いているし、ベンもあの謎の横揺れステップを元気に踏んでいる。
長年のツアーで鍛え上げてきた安定した高プレイヤビリティを誇るバンドではあるけれど、今回ボトムがぐっと強化されたことで古い曲も実にパワフルに甦っている。そのエネルギーがあるから「Why You‘d~」の(オリジナルより長めの)ブレイクもダレなかったし、センシティヴなボーイズ&ガールズのためのラヴ・ソング「Photobooth」すらアンセミックな力強さで波打つのだろう(ベンがペコポコとデジ・ドラムを叩かなかったのはやや寂しかったけど・・・)。そこから続いた新作からの楽曲群は、オーディエンスもさすがに「じっと耳を澄ます」という雰囲気。ミニマルなクラウト・ロック・ビートでしたたかに引っ張る「The Remainder」の切れ味は秀逸ながら、それに較べるとメドレーで繋いだスローなバラッド型の2曲はまだこなれていないか。しかし深みを増したベンの歌唱は見事で、メランコリックで真摯なトーンはアコギに持ち替え始まった「Soul Meets~」でオーディエンスの中に大シンガロングを引き出していった。合唱がピークに達したのは続く弾き語り「I Will Follow~」。数あるDCFC名曲の中でも屈指の1曲にして真情がじわじわ沁みる美しいラヴ・ソングだけに歌いたくなるのも分かるんだけど、筆者の後ろに立っていた男性客がマジに一言一句声を張り上げていて、ベンの声すらまともに聞こえないのはかなりうざかった。頼むから絶唱はカラオケに留めておいてくださいね。
あたたかなトーンで満たされた場内に、一転シャープな緊張感を走らせたのが後半戦1曲目とも言えるニュー・シングル「I Will Possess~」。この晩のハイライトだった。既にネットで聴き込んでいたファンも、ニック(→やや得意げなのがかわいい)が繰り出すカリスマティックなベース・ラインがスリリングな蛇行を描き始めた途端「うぉぉぉおうう!」と歓声で応える。ヴォーカル・パートがキック・インするまで5分近い堂々たるイントロで積み上げていく(ラジオOAを完全に無視した)怪物級のこの曲はDCFCの新たな代表曲になっていくであろうフレッシュでかっこいい曲だし、リニューアルされた彼らのロック・モードが凝縮されている。ベンがキーボードでトチって舌打ちしていたのはご愛嬌だったが、今後のツアーで更に発展・変容していくのがほんっと楽しみなトラック。しかしタフなロックだけではなく爽快な疾走ポップもばっちり乗りこなす触れ幅がこのバンドの魅力で、汗だくのベンが♪パッパー・コーラスでリードする「Sound Of Settling」にこちらも思いきり弾けてしまう。クリスも全曲口ずさみながら演奏していたけど、それくらいいい曲を書く/歌ってるバンドなのだ。「Marching Band~」のせり上がる感動でいったん麗しく幕を引いたものの、まごうことなきパッションとミュージシャンシップが充溢する一流の演奏に「We Want More!」のコールが鳴り止むはずもない。アメリカン・ロックな表情が新鮮な新曲「Cath」、他の楽曲も織り交ぜてスケール・アップした「405」、そしてやはりこれをやってくれないと終わった気になりません!「Transatlanticism」の雄大なサウンド・スケープで大団円。最後にベンがほぼアカペラ状態で繰り返す「Come on・・・」のエモーショナルなコーラスに引き寄せられたオーディエンスが、音に向かって見えない手を伸ばしているような一体感・共感のヴァイブは泣けるくらい美しかった。We Need You So Much Closer。
「ありがとう、君達は最高のオーディエンスだよ!」と感謝の言葉を残して去ったベン。ややもすると空疎なクリシェに響きかねない台詞だが、彼の真に感極まった表情(と紅潮した頬)に欺瞞はゼロだった。と同時に、その姿を見ていて彼らの中に今も息づくUSワーキング・クラス系インディ~パンク・バンドの優れた伝統(もちろんDCFCの音楽性ではなく、スピリットに関してだが)――勤勉にライヴをこなし、ハイプではなく音楽とパフォーマンスでファンを開拓していく――を改めて感じた。ファッションやトレンド性が先行し実質を伴わないアクトが多い中、ピープルズ・バンドとして地に着いた活動を積み重ねてきた彼らの(実は)硬派な姿勢とアーティスティックな成長の達成に年々リスペクトと支持が寄せられるようになってきたことは、ロック・ファンとして本当に心強い。それは筆者にとって、レディオヘッドのヒットやアーケード・ファイアのブレイクと同じくらい重要で大事なことだったりする。現在の4人にラインナップが固まってからもうずいぶん経つが、ライヴ・ユニットとしての完成度はピークに達しつつある。この晩唯一残念だったのが(クリアレイクの時もひどかったが)音の分離が悪くてグチャついた会場PAで、この優れたバンドの演奏を、それに見合う優れたライヴ・サウンドで聴けなかったのは悔しくて仕方ない。というわけで、次回も観に行かなくちゃ。
SET LIST
Bixby Canyon Bridge
The New Year
Why You‘d Want To Live Here
Photobooth
The Remainder
Talking Bird
Grapevine Fires
Soul Meets Body
I Will Follow You Into The Dark
I Will Possess Your Heart
No Sunlights
A Movie Script Ending
We Laugh Indoors
We Looked Like Giants
Sound of Settling
Marching Bands of Manhattan
<encore>
Title and Registration
Cath
405
Transatanticism
| M | T | W | T | F | S | S |
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| 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 |
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