セカンド「Loyaly To Loyalty」リリースを来月に控え、久々にイギリスに戻ってきたLAの「ひんやり熱く痛い、ドライアイス」なロッカー:コールド・ウォー・キッズ。既に新曲も部分的にHPでプレミアされているが、ニュー・アルバムからの楽曲群を聴けるチャンスにうきうきしながら会場に向かう。前回観たのはバルコニー付きの大ヴェニュー(クラップ・ユア・ハンズ・セイ・イェーのオープニング・アクトとして)だったが、今夜のライヴはオール・スタンディングの小型ボールルーム。後方には前作のアート・ワークをアレンジした幕がかかっているだけで、ステージのセッティングもドラム・キットも相変らずミニマルだ。スペクタクルと言えば4人の激しいインタラクションとサウンドのみ、飛び道具なしのライヴ・バンドである彼らにはぴったりのサイズで、まずはひと安心。彼らの醸す熱気はオペラ・グラスで覗きこんだ瞬間きっと生気を失ってしまうし、フィックスされたカメラはその自由奔放なムーヴメントを追えないと思うから。
ツアマネ(?)と思しきリック・ルービン似の人物とテックが機材他の準備を終え、10時をちょっと回ってやっと照明が落ちる。メンバーのたたずまいはいつもながら渋く、ネイトががっちり度を増した以外は変ってない。しかしそのネイトになにげに女性ファンが熱い視線を送っている様子は、かっこいい先生に女学生がほわーんとするのを思わせて笑える。「Pregnant」からゆったりスタートしたライヴは、スタイケンやロバート・フランクを思わせるモノクロームのフレームに切り取られた慟哭とコクのある音作りで場に凛とした空気をみなぎらせる。その緊張感はやはり独特で、なんか背筋がピン!と張るのです。サザン・ブルースの余韻から「We Used To Vacation」がキック・オフし、若い男がメインの観衆は「うぉー!」と沸きあがり大合唱に突入。引き攣ったようなビート&ギターとネイトがカコフォニックに叩き鳴らすピアノのドラマは、「Surfer Rosa」の頃のピクシーズのフリーキーなバーストとルー・リード「Berlin」のデカダンな闇が交錯するような・・・なんて、ついこういうキザなことを書きたくなるからこのバンドは「(基本的にペダンチックになりがちな)音楽ブロガーのアイドル」なんて呼ばれてしまうのだろうか??しかし「Surfer Rosa」も「Berlin」も、高踏どころかロックが好きなら一度は潜っていい作品と確信している筆者はコールド・ウォー・キッズのそういうまっとうさ――近道せずに古典からちゃんと学ぶ、愚直なほどの学習ぶり――に愛情と素直な共感しか感じない。
そのシリアスさがうざったく映るのかもしれないし、エモーショナルで情熱的な歌声や過剰なステージ・アクションに懐疑心を抱く者がいるのも分からないではない。知人には「えー、あんなかっこつけのスノッブ中流子女御用達のバンドのライヴに行くの~~?」とバカにされたくらいだ(悪かったわね!)。しかしてんでばらばらに身体を隆起させ汗だくになりながら、それ自体はシンプルでストイック、かつ異なるメロディを歌う各パートを組み上げていくメンバーはかっこいいというか(冷静に見れば)「変ったお兄さん集団」。ベースのマットとネイトが勢い余って衝突しかける場面が何度もあったし、パーカッション代わりに叩いていたワインの空き瓶が目を離した隙にキーボードから落っこちても、演奏に没頭したジョニーはまったく気がつかない(「あ、あれあれ?」と我に返ってかなり慌てて探してましたが)。スマートでもなんでもないが、全身で音に参画し持てる力をストレッチする様には胸が熱くなります。「Hang Me Up To Dry」のプロモ・ビデオでの激下手でしまいに泣けてくる演技を見ても、彼らは音楽以外は不器用な人達だと思う。硬くても大目に見てあげてくださいまし。
各人のグルーヴはずれているのにブレイクのタイミングは完璧、呼吸の合った演奏がさすがに手馴れた観の「Passing The Hat」に続き、この晩最初の新曲=「Mexican Dogs」(だと思う、たぶん。歌詞から察するに)。エレアコのきしみがリードするガレージ・ブルースとでもいうべき曲で、ずっぱまりでかっこいい。そこからもう1曲繰り出された新曲はリフとリズムを中心にビルド・アップしていくタイプの楽曲で、グルーヴやメロディのフロウをだるま落しのようにスコンと外していく「引き算型」の彼らにしては珍しく王道なロック。こういう曲を聴くと、コールド・ウォー・キッズがどれだけレディオヘッドに影響を受けているかがよく分かる。と同時に、このバンドってアナログ/人力/マニュアルでレディオヘッドをやろうとしているようなところもあるなと思う。「Rubidoux」の爆裂ドラム・ロールと燐光を放つギター・サウンド、ゴムのようにしなるベース・サウンドのカタルシスを満喫し、カウベルが印象的な新作曲、そしてこの晩もっとも反応が大きかった名曲「Hang Me Up To Dry」へ。照明を落し、影絵のようにメンバーの姿がうごめく様はシンプルながらドラマチックで、曲の持つ濃いコントラストとよくマッチしていた。再び闇になりネイト&マットが「Robbers」の合間に懐中電灯2本でオーディエンスを照らす趣向は、映画館で音楽を観ているような感覚が残って面白い。
しかしその落ち着いた空気を打ち破ったのが、公式HPで試聴が始まったばかりだった「Something Is Not Right With Me」。ディスコ調のグルーヴから一気にネイトのハイ・テンションなヴォーカル(というかアジ・ラップ?)が爆発し、ミドルを経てそのまま駆け抜けてしまう大胆な構成のこの曲、これまでのストイック&ミニマルなアプローチから踏み出した新境地だ。うらぶれた酒場に響く負け犬ピアニストの咆哮(?)「Hospital」に打たれ、ピアノの不協和音イントロが印象的だった新曲を聴くうち歪んだソウル・ミュージックという言葉が浮かんできた。そう考えると彼らはそれこそ鍛冶屋のように、古典的な素材――メロディばかりではなく歌詞も含めて――を熱したり冷やしたり伸ばしたり叩いたりしているバンドのように思えてくる。ラストの「Saint John」ではジョニーがキーボード&パーカッションにスイッチし、サポート・ギターも加わっての5人がステージ上を動き回り音を投げ合い、よってたかって曲を変形させながらのエクスタティックな演奏で観客を巻き込んでいく。この解放されたノリはCYHSYとのツアーで学んだものじゃなかと思うし(あのライヴではエルヴィス・パーキンスも含めみんなでステージ共演、という場面もあって微笑ましかった)、それが伝播し近くの男性グループも踊り始めたくらい。ある意味宗教集会を思わせるその熱狂的な光景が最後の最後で登場したのは皮肉っちゃあ皮肉だが、久しぶりの単独公演で演奏する側も客側も緊張がほぐれるまで時間を要したのだろう。グルーヴにノるより携帯写真撮るのに夢中な奴ばっかりだったからなあ、前列。しかし、このバンドの音楽は頭であれこれ分析するよりハートや身体で聴いた方がいいと思う。ヴィジュアルやスタイリッシュなムードが深読みを促すのは仕方ないけど、音の作りも歌詞も分かりやすすぎるほどストレート。そのギャップをセカンドでどう埋めてくれるか、楽しみです。
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コールド・ウォー・キッズを脱兎チェック!
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