「Morning Gloryになるのか、はたまたSecond Comingか」と、UKギター・ロック今後10年の明暗を分けるのはこの1枚!(なーんて、ちょと大袈裟ですな)と言わんばかりの期待・注目を一身に集めるセカンドFavourite Worst Nightmareリリースを目前に控え、アークティック・モンキーズが決行したプレ・アルバム2夜連続ロンドン公演初日。新作曲をいち早く聴ける興奮と、この日初夏並みの暑さを記録した日中の気温が居残ったような熱気がじっとり混じり合う場内のどてっ腹に風穴を開けてくれたのは、先行ダウンロード・シングルBrianstormの疾風怒濤なイントロだった。もちろん、場内一瞬にして合唱の嵐。モンキーズお得意のきりもみ型ブレイク・ダウンもばっちり決まり、Still Take You Home、Dancing Shoesと間髪入れず畳み掛ける速攻セットは、グルーヴの強化を筆頭に硬度・タイトさを増した新作の性急なダイナミズムこそ今の4人の自然なスピード感である→だからみんなもアクセル踏めよ~!とハッパをかけていく。
マットの雷神ドラミングは最後までロールしまくりだし、アレックス&ジェイミーのインタラクションもほぼ全編にわたって高レベルをキープ。これが精力的なライヴ活動を通じて少しずつ、しかし確実に成長していった結果生まれた自然な脱皮なのは引き締まった演奏からも明らかで、レコーディング音源の完成度~ディテールをそのままライヴに移し変える、というザ・ストロークス型のストイックなアプローチも堂々たるもの(これ、コケたら最高にかっこ悪い)。新作から披露されたのは計7曲で、Balaclavaのフィニッシュがすっぽ抜けて笑いを誘ったり、Old Yellow Bricksでリアムっぽい歌唱ポーズをとってみたものの決まりきらなくてすぐやめちゃうアレックスだとか、作品は「抜けた」ものの、それに伴う新たなステージ・プレゼンスはまだ模索中らしい・・・と感じる場面は何度かあった。しかし、「モンキーズ第2章へのシフト・チェンジ作戦」inロンドンというこの晩の目的は、まずは充分に達成されたと思う。
その号令を受けて、(新曲群に対しては若干様子見なところもあったものの)観客もぐいぐいヒート・アップ。手拍子がどこからともなく始まったBalaclavaから~Dance Floorへの流れで最初の沸点に達し、若い男ファンだらけの汗臭くビール臭いステージ前方にしっちゃかめっちゃかな騒乱が巻き起こる。Do Me A Favour(ライヴで抜群に映える曲ですな)、やっぱりファン一番人気♪Mardy Bumの2曲で一息つけるまでマジに「ひえーい助けてっ」な窒息寸前状態だったし、When The Sun Goes Downではアレックスがマイクを離れ、オーディエンスの合唱にヴォーカルを任せる美しい場面も生まれるなど、彼らのLADS BAND(=野郎バンド)としての愛されぶりを再認識。要するに「男が惚れる男バンド」というか、同性愛的なニュアンスともちょっと違うんだけど、たとえば感極まってモリッシーにタックルして抱きついちゃう(普段の生活では絶対そんなことしでかしそうにない)ノンケのスミス男とか、リアムの「ジョン・レノンと結婚したい」発言にも似た、同化願望と憧れに男性ならではの無骨な愛情表現がブレンドされた狂おしい熱情みたいなものが、このバンドの周辺には早くも形成され始めている。ニュー・オーダーやオアシスのUKファン層にノリや反応が近いなと感じるし、忠誠心が強いこの手の男サポーターをいったん味方につけたバンドは、息も長い。
最近のバンドだとカサビアンもLADS BANDになる素養は秘めてるし、明らかに狙ってもいる。だけど、「プライマル・スクリームが」とか「タンジェリン・ドリーム云々」とか、ちょっとかっこつけを言い出しちゃうとこがまだ甘い(その間隙を縫って、早くもLADS BANDとして愛されつつあるのがフラッテリズ)。Parklifeの頃、ブラー(特にデーモン)がLADを気取って逆に反感買われたけど、色んな意味で恵まれたブルジョワのインテリ連中がLADSっぽさを模倣しようとしても、どうしたって馬脚が出る(そのアイロニーを揶揄したのが、パルプのCommon People)。イギリスが生んだ究極のLADS BANDといえば個人的にフェイセズが思い浮かぶが、ああいう飲んだくれの野放図さ・ちゃらんぽらんさって「旧き良き時代」の男像=いわばパンク登場でいったん否定されたロマンみたいなもので、要求の多い今時の女性の期待に応えるべくファッションに気を配り、ジムで身体を鍛えるのは当たり前、な00Sアーバン・モダン・メ~ン(たとえばデイヴィッド・ベッカムみたいな)の対極的存在とも言える。それでもたまにLADS BAND人気がドーンと噴き出すのは、女性化しつつある社会の中で抑圧され、アイデンティティ・クライシスを感じる血気盛んな男性諸氏からの「思いっきり酒飲んで暴れて、バカやったっていいじゃねーか」「ビール腹でもオレは気にしない」的開き直り~揺れ戻しみたいなもんじゃないかと思う。
話が完全に脱線したが、アークティック・モンキーズは若く、もちろん前時代的ロッカーではない。ドライなビート感といいテンポよく突っ込むコーラスといい、LADS ROCKが陥りがちなDAD ROCK(おやじロック、あるいはUK演歌)のベターッとした退屈さはバッサリ排除されているし、そこが新世代と称される所以でもある(音楽的にはまったく違うが、サウンドのあっけらかんとしたキレはミューズに近いと思う)。しかしアレックスの声と言葉には情があって、泣けるし、歌える。彼らが提示するLADS的な湿り気と乾きの新たなバランス。それがそのままUK新スタンダードになるかどうかは、まだ分からない。しかし彼らをその座に就かせる状況は確実に整いつつあって、セカンドの爆発的ヒット(まだ発売前だが、前作以上にヒットするだろう)~6月グラストンベリー:ヘッドライナー~7月モンキーズ祭り@ランカシャー・クリケット・グラウンドまでガッチリ敷かれた夏の陣07は、新たなストーリー=自分達の世代のスパイク・アイランドを、メイン・ロードを待ち焦がれてきたキッズの心理と無意識レベルでシンクロしている。彼らもちょっと前までそんなキッズの一部だったんだから、当然だろう。その意味で、アークティック・モンキーズは時代に選ばれたバンドだと思うし、雪だるま式に大きくなる一方の期待に応えるだけの地力と、自らのハイプを信じないクールな知性は備えている。あとは、やるべきことをやるだけだ。
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