家の近所に今年4月オープンしたばかりのカフェ兼ライヴ・ヴェニュー=Cafe Oto。テニスコーツのさやさんがプレイしたり、ポリシーのある素敵で面白そうな会場だな・・・と思っていたところ、東ロンドンを舞台に行なわれたプチ音楽フェスの一環としてこのカフェでドイツの個性派レーベル=Tomlab(パトリック・ウルフ、ファイナル・ファンタジー、ヘイ・ウィルパワー、ブックス、WHY?等)のイベントが行なわれることに。話題のカナディアン・エレ・ポッパーNo Kids、フィル・イルヴラムのMt.Eerieにももちろん惹かれたが、なんといっても観たかったのは・・・新作「The Master‘s Bedroom Is Worth Spending A Night In」を上梓したばかりの・・・シスコのカルト・ガレージ番長:ジョン・ドワイヤー率いるThee Oh Seesでしょう!その期待に150%応えてくれる、トンデモ・パフォーマンスでした。ぶひひひひ~~ん!(馬かいな)
昼間はお茶やスナック、軽いドリンクを楽しめるこのカフェ、基本的にはコンクリ打ちっぱなしの小さめウェアハウス~アート・スタジオといったところ。特にステージがあるわけではなく、テーブルや椅子をフロアの隅に片付けた空間がそのままパフォーマンス・エリアになる。ゆえに前に行かないと何も観えないという困った弊害もあるのだが、通りに面した大きなガラス窓から外が見通せて普通の薄暗いライヴ・ハウス(地下OR2階)とは違い風通しがいいのは新鮮です。開催者側もバンドの出演時間/順番をよく把握していない(笑)ので、とりあえず外の街路に腰掛けお酒を飲んでいるとゲストで来ていたと思しきエド@ケミカル・ブラザーズがビールを飲んでいる姿を発見。アンダーグラウンドなイベントにもちゃんと顔を出しているんだなーと感心していたところ、数人の連れと歩道のふちでだべっているバキバキに刺青の入った精悍な男性が目に入る。ジョン・ドワイヤー先生その人でした。
くつろいでいるように見えて、どこか動きや立ち居振る舞いのテンションが普通の人より高いような気が――と感じたのも、コーチウィップス、ピンク&ブラウン、そしてオーシーズ(OCS、The Oh Sees、The Ohseesなど微妙に変化してきたが、今回から〝Thee〟表記になっています)などこれまで様々なユニットを通じて彼が切れ目なく吐き出してきたスピード・フリーク系ノイズ+電撃ガレージ・パンクのキレっぷりが頭に浮かんだからかもしれない。いまやプチ伝説と化した感のある3人組コーチウィップスのライヴDVD(CD+DVD2枚組「Double Death」)は、たとえ音楽的な区分としては「ガレージ」に括られようとも彼らがアメリカのネオ・ガレージ勢よりもUK一派=ザ・フォール、ビリー・チャイルディッシュやライトニング・ボルトやヘラ、ノー・エイジといったサイケデリック・ノイズな面々と共振していることを伝えてくれるはず。あれは必見。
そのDVDにもドキュメントされている民家(たぶんファンの家?)や廊下、倉庫などあらゆる場所を閉ざされた狂乱空間にぎゅわーんとワープさせてしまうコーチウィップスのフリー(ク)・スピリットは、ジョン+ドラムス、ベース、タンバリン&ヴォーカル4人組となった今も健在だった。The Oh Seesで鳴らしたアンビエント&イノセントなフォーク・サイケ(こちらもすごくいいんですが)は姿を消し、オープナー「Block of Ice」からタイトなガレージ・ビートが爆発。コーチウィップスの頃はいなたいキーボードの存在が60年代度を高めていたが、ギターが主役のThee Os Seesはキリキリ引き締まった弦とタンバリンのクラッシュ音、女性シンガー:ブリジットとの高音ハーモニーがリード。セットの前半は最新作「Master‘s~」中心、後半は前作「Sucks Blood」というワン・ツーな展開で、ソニックスやプリティ・シングス、クランプスら不良ガレージ・パンクスのシンプリシティをスーサイドの漂白されたニヒリズムで解釈したごとき独特な覚醒をもたらすAMラジオ・ロックンロールがラストまでほぼノンストップの勢いで続き、こちらも踊りまくりである。
にしても、ジョン・ドワイヤーは想像以上にすさまじいパフォーマーだった。アンプに飛び上がったり機材を倒したりは当たり前、鮮やかな内股膝折りから容赦ないマイクへのアタック、シアトリカルなジェスチャー、手を使わずビールを飲むアクロバットな妙技など、スキゾに次々切り替わっていく彼の取り衝かれたような動きからは一瞬も目が離せない。うっかり近寄ると吹き飛ばされんばかりに猛烈な、凝縮されたエネルギーのスピン・サイクル。しかしオーディエンスに暴力を煽るような安易なアナキズム/乱気流とは不思議と無縁で、ジョンの内部で吹き零れんばかりに煮えたぎっているマグマをきっちりコントロールしプロフェッショナルに「見せて」いく、知性とシャープな感性に貫かれたパフォーマンスだった。時にお茶目なユーモアを披露(ガガガガ~~~ッとリフでフロアを切り裂いた直後に弾いていたギターをクルッと裏返し、ガムテープで綴られた「THANKS」をお客に見せる技が抜群!)するところも「ただプレイするのが楽しいからやっている」なガレージ精神を伝えて懐が深かったし、アメリカ人ならではの飛び切りのロックンロール・エンターテイナー~ショウマンだと思った。ジャック・ホワイトもうかうかしてられないね。そのブチ切れた勢いにただただ気圧されたのかアーティなキッズが中心のお客のノリは正直クレイジーとは言いがたかったが(まあ、あのテンションの高さを初めて観たら誰でもびっくりするだろうが)、腕組んでしかめ面で眺めているだけじゃ感じられないこともあるのでは?と思った。ノってエンジョイしてなんぼ、だと思います。
オーシーズがすごすぎたせいもあり、ノー・キッズのラップトップ・パフォーマンスはスルー(すみません。でも、自宅ステレオで聴くならまだしもライヴはまだ作品の延長線といったところでスペシャルなサムシングは感じませんでした)。夜もとっぷり更けてマウント・イアリのパフォーマンスが始まる頃にはオーディエンスもみな床座り状態だったが、背後のスクリーンに風景映像を流しつつフィルがギターとiPodで淡々と醸し出す詩的な空間はやはり格別。そのギターを観客相手にいきなりオークションし始めるオープンさもスウィートだったし(215ポンドで落札。欧州滞在費の足しになったのでしょうか?)、ミュートしたドラムの繊細さとコーラス・ワークが冴えるトリオ編成にシフト・チェンジしてからは演奏の熱もひしひし上昇。大会場でのビッグなライヴに行くのも楽しいけれど、やっぱりこういうパフォーマーの顔や性格、人格が透けて見えるインティメイトなライヴには心打たれるなあとの思いを噛み締めながら帰途に着いたのでした。
ジー・オーシーズ「Master’s Bedroom~」を脱兎チェック!
マウント・イアリ/マイクロフォンズを脱兎チェック!
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