Long May You Run
今回のATPオーディエンスは、ヒゲ、長髪およびウェスタン・シャツ着用者が多かった。体毛度の高いグラインダーマンへのリスペクトなのか、はたまたニック・ケイヴ&ウォーレン・エリスがサントラを担当したオーストラリア版西部劇「The Proposition」にちなんだもの・・・なのかは不明ですが、ワイルド・フロンティアのハードボイルドを夢想する(しかないんですよ、島国育ちのイギリス人は。自分もそうだけどさ)にわかカウボーイズ&カウガールズが場内を闊歩していた。というわけで、週末中2回演奏する(=他のアクトとバッティングして観れなかった!という悲劇を回避するための、主催者側による配慮。今ATPで2セット出演したのは、他にニック・ケイヴ&グラインダーマン、ダーティ・スリー、ジョアンナ・ニューサム)ほど欧州で人気の高いマグノリア・エレクトリック・カンパニーのフロント・マン=ジェイソン・モリーナが、ダンガリー・シャツにデニム、つば広のハンティング帽姿で登場したのは、とてもハマっていた(もっとも、途中から「うーん、これはカウボーイというよりも、むしろクロコダイル・ダンディっぽい」とも感じましたが。ちなみにこの人、基本はださいアメリカ人の象徴=トラッカー・キャップ着用だし、おしゃれでやってないところが素敵。しかも、翌朝ゲーセンで暇つぶししていた時も、まったく同じ格好だったのがまた素敵)。
最新EPが比較的メロウだったこと、また前回観たのがジェイソン・モリーナのソロ・アコースティック・ショウだったこともあり、久々に体験するバンド・セットは、やはり震えが走るほどかっこよかった。トランペットやキーボードを配しつつ、核になる音はレスポールの哀感あふれる響き。たとえば同じニール・ヤング派でも、ビルト・トゥ・スピルのダグ・マーシュのように神がかったソロで圧倒するのとは異なり、バンドが一体となって吠え、ヴィブラートし、時にざっくばらんにスウィングしていく。現代のクレイジー・ホースと感じるくらいソウルフルだし、だからこそ彼らの演奏には、毎回腹の奥をぐっと掴まれるのだと思う。その確かなグルーヴをバックボーンに流れていくジェイソン・モリーナの歌声は、ソングス・オハイア時代から変わらぬ男臭さと哀愁、朴訥とイノセンスの絶妙なブレンドで、これまた泣けてしょうがなかった。歌唱法そのものは淡々としているし、声を張り上げシャウトすることも、アメリカン・ルーツ・ロッカーに多いトゥワンギーなコブシ使いもない。しかし、その内側に静かに燃える情念は、山火事のように進みながら、こちらの胸を切なく燻していく。「エモーショナルな歌声」というのは、彼みたいなシンガーにこそふさわしい形容なのだろう。もっと聴かれていい、現代一級のアメリカン・ライヴ・バンドだと思う。
他にも、この初日はサランドニス(ギリシャのフォークロア・ミュージック。シャーマニックな弦の踊り方に、ウォーレン・エリスのヴァイオリンのインスピレーションを観た気がしました)、ブロークバックのエネルギッシュなジャズなど、刺激的な出会いがいっぱいだった。がしかし、体力的に午前1時が限界で、ジョシュ・ピアスン(元リフト・トゥ・エクスペリエンス)は惜しくも見逃しました・・・(涙)。
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